AI概要
【事案の概要】 円皮鍼(テープに短い針が付いた身体に貼るタイプの鍼治療用医療機器)を製造販売する原告(セイリン株式会社)が、自社製品「パイオネックス(PYONEX)」の立体的形状について立体商標の登録出願をしたところ、特許庁から商標法3条1項3号(商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)に該当し、同条2項(使用による識別力の獲得)の適用もないとして拒絶審決を受けたため、その取消しを求めた事案である。本願商標は、肌色の円盤状テープの非粘着面(皮膚に接しない側)中央に半透明で白い円筒形の突起部分(ボタン部)を配し、反対側の粘着面中央に針を配した立体的形状からなる。原告は、このボタン部が他社製品には存在しない独自の特徴であり、自他商品識別力を有すると主張した。原告製品は2004年の販売開始以来、円皮鍼市場で約80%のシェアを獲得していた。 【争点】 (1) 本願商標が商標法3条1項3号に該当するか(商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるか)。 (2) 本願商標について商標法3条2項の適用があるか(使用により自他商品識別力を獲得したか)。 【判旨】 裁判所は、いずれの争点についても原告の主張を退け、請求を棄却した。争点(1)について、商品の立体的形状は多くの場合、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり、客観的にそのような目的で採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り商標法3条1項3号に該当すると判示した。本願形状は、一定の独自性は認められるものの、基本的構成において他社製円皮鍼と共通しており、特許明細書やカタログの記載からも、その特徴は針体のテープへの確実な固定や肌への快適な貼付け等の機能上の理由により選択されたことが明らかであるとして、機能上の理由による形状の選択として予測し得る範囲内のものであると認定した。争点(2)について、裁判所は、原告製品が高い市場占有率を有し、需要者・取引者の間で広く認識されている可能性は認めつつも、その認識は原告自身の認知度や商品名の認知度、技術的特徴への認知度によって生み出されている可能性もあるとした。広告宣伝においても本願形状が自他商品識別標識として認識される態様の記載は見られず、需要者である鍼灸師等の専門家は形状よりも衛生面・安全性・機能性に着目する傾向にあるとした。さらに、鍼灸師等の証明書は誘導的手法で作成され信用性が低く、アンケート調査もサンプルの偏りや回答者数の不足があり、鍼灸師のブログも僅か18例にすぎないとして、いずれの証拠によっても本願形状が自他商品識別力を獲得したとは認められないと判断した。