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【事案の概要】 米国ニューヨーク州に在住する日本人夫婦である原告らは、平成9年12月にニューヨーク州法の方式に従って婚姻を挙行したが、その際「夫婦が称する氏」を定めず、それぞれ生来の氏を引き続き称していた。原告らは平成30年6月、千代田区長に対し、婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」欄に「夫の氏」と「妻の氏」の双方にレ点を付した婚姻届を提出したところ、民法750条及び戸籍法74条1号に違反していることを理由に不受理処分を受けた。そこで原告らは、国に対し、主位的に戸籍への記載によって婚姻関係の公証を受けられる地位の確認を、予備的に証明書の交付による公証を受けられる地位の確認及び立法不作為を理由とする国家賠償(各10万円)を求めて提訴した。 【争点】 (1) 原告らの婚姻がわが国において有効に成立しているか(民法750条の「夫婦が称する氏」を定めていないことが婚姻の実質的成立要件を欠くことになるか) (2) 主位的請求・予備的請求について確認の利益があるか(方法選択の適否、即時確定の利益) (3) 外国で夫婦が称する氏を定めないまま婚姻した日本人夫婦の婚姻関係を公証する規定を戸籍法に設けていない立法不作為が憲法24条に違反し、国賠法上違法といえるか 【判旨】 裁判所は、まず婚姻の成否について、法の適用に関する通則法24条2項が婚姻の方式は婚姻挙行地の法によると定めており、外国の方式に従って「夫婦が称する氏」を定めずに婚姻が挙行されることは当然に想定されていると指摘した。民法750条は婚姻の効力を定めた規定であり(平成27年別姓訴訟大法廷判決参照)、実質的成立要件ではないことから、原告らの婚姻は有効に成立していると認定した。 しかし、主位的請求(戸籍記載による公証)については、戸籍法122条に基づく家庭裁判所への不服申立てというより適切な手段が存在するため、確認の利益を欠き不適法であるとした。予備的請求(証明書交付による公証)についても、原告らの主張する不利益は事実上の不便や将来の抽象的な危険にとどまり、「夫婦が称する氏」を定めて届け出れば戸籍の編製を受けられるのであるから、確認の利益を欠くとした。 立法不作為に基づく国家賠償請求については、民法750条が憲法24条に違反しないとされていることに照らし、外国方式で氏を定めずに婚姻した夫婦が氏を定めるまでの暫定的な婚姻関係の公証規定を設けていないことは、合理的理由のない制約とはいえず、立法裁量の範囲内であるとして、国賠法上の違法は認められないと判断し、請求を棄却した。