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【事案の概要】 米国ニューヨーク州に在住する日本人夫婦である原告らは、平成9年にニューヨーク州法の方式に従って婚姻を挙行したが、その際「夫婦が称する氏」を定めず、それぞれ生来の氏を称し続けた。原告らは平成30年に千代田区長に対し、婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」欄に「夫の氏」と「妻の氏」の双方にレ点を付した婚姻届及びニューヨーク州発行の婚姻証書謄本を提出して届出をしたところ、民法750条及び戸籍法74条1号に違反していることを理由に不受理処分を受けた。そこで原告らは、国に対し、主位的に戸籍への記載によって婚姻関係の公証を受けられる地位の確認を、予備的に証明書の交付による公証を受けられる地位の確認及び立法不作為を理由とする国家賠償(各10万円)を求めて提訴した。 【争点】 (1) 主位的請求における方法選択の適否(確認の利益の有無) (2) 予備的請求における即時確定の利益の有無 (3) 原告らの婚姻の成否(民法750条の「夫婦が称する氏」を定めていないことが婚姻の実質的成立要件を欠くか) (4) 外国方式で別氏のまま婚姻した日本人夫婦について婚姻関係を公証する規定を戸籍法に設けていない立法不作為の違憲性 【判旨】 裁判所はまず婚姻の成否について判断し、通則法24条2項が婚姻の方式を挙行地法によると定めている以上、外国の方式に従って「夫婦が称する氏」を定めることなく婚姻が挙行されることは当然に想定されており、民法上の実質的成立要件(731条〜737条)を満たす限り婚姻自体は有効に成立していると認定した。民法750条は婚姻の効力を定めた規定であって実質的成立要件ではないとし、別姓訴訟大法廷判決(最大判平成27年12月16日)を引用した。 しかし、主位的請求については、戸籍法122条に基づく家庭裁判所への不服申立てという、より有効で適切な救済手段が存在するとして、確認の利益を欠き不適法と判断した。予備的請求の地位確認についても、原告らの主張する不利益は事実上の不便や将来の抽象的な危険にとどまり、「夫婦が称する氏」を定めて届け出れば戸籍の編製等がされる以上、即時確定の利益がないとして却下した。 国家賠償請求については、民法750条が憲法24条に違反しないと解される以上、同条を戸籍手続に反映した戸籍法の規定も同条に違反せず、暫定的状態の婚姻関係の公証に関する立法措置の要否・内容は国会の裁量に委ねられた問題であるとして、立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法とはいえないと判断し、請求を棄却した。