特別地方交付税の額の決定取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 泉佐野市(原告)は、いわゆるふるさと納税として多額の寄附金を集めた地方団体である。総務大臣は令和元年12月、特別交付税に関する省令の改正により新設された特例規定(附則5条21項・附則7条15項)に基づき、ふるさと納税による寄附金収入の一定額を減算項目として、原告に対する令和元年度第1回目の特別交付税の額を710万2000円と決定した。さらに令和2年3月、第2回目の額を4616万7000円と決定した。本件各特例規定は、ふるさと納税として多額の寄附金を集めたことを理由に特別交付税の額を減額するものであり、原告はこれが地方交付税法の委任の範囲を超え違法であると主張して、本件各決定の取消しを求めて出訴した。これに対し被告(国)は、本件訴えは裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらず不適法である旨主張した。本中間判決は、本件訴えが「法律上の争訟」に当たるか否かの点に限って判断したものである。 【争点】 地方団体が国に対して特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるか。具体的には、(1)当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であるか、(2)法令の適用により終局的に解決することができるものであるか、が争われた。被告は、地方交付税の額の決定を受ける地方団体の地位は「固有の資格」(一般私人が立ち得ない行政機関特有の立場)であり、訴訟は法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものにすぎないと主張した。また、地方交付税法が抗告訴訟を予定しておらず行政内部の解決に委ねている旨、さらに本件訴訟は機関訴訟の対象となる訴訟である旨を主張した。 【判旨】 裁判所は、本件訴えは「法律上の争訟」に当たると判断した。まず(1)について、地方交付税は地方団体が自らの事務を処理するために交付されるもので、国の地方団体に対する支出金の性質を持ち、その額の算定方法等は地方交付税法によって法定されていることから、地方団体が国から法律の定めに従い地方交付税の分配を受けることができるか否かに関する紛争は、地方団体と国との間の具体的な権利ないし法律関係の存否に関するものであると認定した。次に(2)について、地方交付税の額の算定方法及び交付手続は法定されており、特別交付税の額の決定の適法性は関係法令の適用によって判断可能であるから、法令の適用により終局的に解決することができると判断した。被告の主張に対しては、行政主体であっても独立の法人格を有する以上、具体的な権利ないし法律関係の存否を争い得る場面では司法審査を否定される根拠はないとし、「固有の資格」に基づく訴えが常に司法審査の対象外となるとは解されないとした。また、最高裁平成14年判決(宝塚市パチンコ店事件)は行政主体が国民に対し行政上の義務の履行を求めた事案であり、本件とは事案を異にすると退けた。地方交付税法に抗告訴訟を認めない明確な規定は存在しないことも指摘した。