AI概要
【事案の概要】 漫画家である原告が、自身の著作権を有する漫画「勇者のクズ」の電子データが、P2Pファイル共有ソフトウェアであるBitTorrent(ビットトレント)を通じてインターネット上で無断共有されたとして、経由プロバイダである被告(株式会社オプテージ)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者の氏名及び住所の開示を求めた事案である。原告代理人は、令和2年7月3日、ビットトレントを使用して本件データをダウンロードした際に、被告が管理するIPアドレスの端末から本件データがアップロードされていることを確認した。当該IPアドレスの端末は、本件データ以外にも多数のファイルをビットトレント上で共有可能な状態にしていた。 【争点】 主な争点は3つある。第1に、被告との契約者が本件データを発信したと認められるかである。被告は、IPアドレスの特定にはテレコムサービス協会の協議会が唯一認定した「P2P FINDER」を使用すべきであり、原告の特定方法では技術的信頼性が不十分であると主張した。また、IPアドレスが秒単位で再割当てされる可能性や、市販ソフトウェアによるIPアドレス偽装の可能性も指摘した。第2に、原告の公衆送信権の侵害が明らかであるかである。被告は、ビットトレント利用者がダウンロードと同時にアップロード者となる仕組みを知っているとは限らず、発信者に故意・過失がない可能性があると主張した。第3に、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるかである。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。争点1について、ダウンロード時の画面上にIPアドレス及びポート番号が明示されており、現実に原告著作物の複製物がダウンロードでき、かつ被告が当該IPアドレスによる通信の事実を否定していないことから、契約者以外の者がデータを発信したとは考え難いとした。秒単位でのIPアドレス再割当てやIPアドレス偽装の主張についても、被告から具体的な事情の主張がないとして排斥した。さらに、「P2P FINDER」の利用を発信者情報開示の事実上の条件とすることは相当でないと判示した。争点2・3について、プロバイダ責任制限法4条1項1号の文言に照らし、原告が発信者の故意・過失を立証する必要はないとし、ビットトレントの仕組みはインターネット上で広く説明されていること、契約者が多数のファイルを送信可能な状態にしていたことから、権利侵害の明白性及び開示の正当理由を認めた。