公電磁的記録不正作出、不正作出公電磁的記録供用、詐欺被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、A病院臨床麻酔部の准教授であった者である。被告人は、同病院の医学部教授が特定の薬剤(C)を積極的に投与する方針を推進していたことを受け、同薬剤を溶解して手術室に配布していたが、実際には多くが患者に投与されずに廃棄されていた。それにもかかわらず、被告人は、令和元年8月から令和2年3月までの約8か月間に合計81回にわたり、病院内の麻酔記録システムに、患者に同薬剤を投与した旨の虚偽の情報を入力して電磁的記録を不正に作出し、これを供用した(公電磁的記録不正作出・同供用)。さらに、被告人は前記教授と共謀の上(一部を除く)、実際には使用していない薬剤の薬剤料分合計約84万円を含む診療報酬を、情を知らない病院職員を介して審査支払機関に請求させ、詐取した(詐欺)。被告人が虚偽記録を行った動機としては、教授の意向を他の医局員に無理に押し付けるわけにもいかないという思いや、使用されなかった薬剤に係る薬剤料を病院の負担にすると大学に迷惑がかかるという思いがあった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の事情を考慮して量刑を判断した。まず、被告人は自己の准教授という立場を悪用し、診療報酬請求の前提となる重要な公的記録である麻酔記録を改ざんしたものであり、医療現場における公電磁的記録に対する社会の信用を大きく害したと指摘した。約8か月間に81回もの改ざんを繰り返しており、常習性も認められる。詐欺による財産的被害も約84万円と少額にとどまらない。また、教授の意向や大学への配慮という動機があったとしても、そのために公的記録の改ざんや診療報酬の不正請求に及ぶことは許されず、犯行を重ねた一連の意思決定は非難を免れないとした。他方、被告人に有利な事情として、事実を全て認めて反省の弁を述べていること、詐欺の損害額について被害弁償の申出をしていること、大学を懲戒解雇されて一定の社会的制裁を受けていること、前科前歴がないことを挙げた。これらの事情を総合考慮し、求刑どおり懲役2年6月、執行猶予4年を言い渡した。