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【事案の概要】 原告は、「六本木通り特許事務所」の文字を標準文字で表した商標について、第45類「スタートアップに対する特許に関する手続の代理」を指定役務として商標登録出願を行った。しかし、特許庁は、本願商標が商標法3条1項6号(需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標)に該当するとして拒絶査定を行い、不服審判請求も不成立とする審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に出訴した。 本件の背景として、「六本木通り」は昭和59年に東京都が設定した通称道路名(千代田区霞が関から渋谷区渋谷までの道路)であり、「特許事務所」は弁理士が業務を行う事務所を意味する一般的な名称である。審決は、本願商標が「六本木通りという道路に近接する場所に所在する弁理士の事務所」程度の意味合いとして認識されるにとどまり、自他役務の識別力を欠くと判断した。 【争点】 本願商標「六本木通り特許事務所」が商標法3条1項6号に該当するか否か。具体的には、(1)「○○通り□□事務所」の文字が広く採択・使用されているとの取引実情の認定に誤りがあるか、(2)本願商標が需要者に単なる役務提供場所の表示としてではなく、出所識別標識として認識されるか、(3)本願商標は新規で意外性のある造語として識別力を有するか、が争われた。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、本願商標の構成中「六本木通り」は35年以上にわたり広く一般に親しまれている道路の通称名であり、役務の提供場所を意味すると理解されること、「特許事務所」は指定役務を提供する者の一般的名称であることを認定した。そのうえで、両語を結合した「六本木通り特許事務所」は、「六本木通りに近接する場所に所在する特許に関する手続の代理等を行う者」を一般的に説明しているにすぎず、需要者において他人の同種役務と識別するための標識とは認識し得ないと判断した。 原告の主張に対しては、「○○通り□□事務所」の使用実情に関する審決の認定に誤りがあるとしても、それは結論を左右する前提事実ではないとした。また、複合名詞として新たな意味を生じさせることや使用による識別力の獲得について原告が具体的に主張立証していないことを指摘した。さらに、「○○通り」と「法律事務所」を組み合わせた構成の商標が多数存在し、法律事務所と特許事務所は同様に指定役務を提供し得る事務所であるから、「法律事務所」を「特許事務所」に置き換えても新規性や意外性は認められないとして、原告の主張をいずれも退けた。