特別定額給付金の支給義務付け等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策として、内閣は令和2年4月20日、全国民に一律10万円の特別定額給付金を支給する閣議決定を行った。総務省は実施要領を策定し、給付対象者を原則として令和2年4月27日(基準日)時点で住民基本台帳に記録されている者と定めた。基準日以前に住民票を消除されていた者でも、基準日の翌日以降に新たに住民登録がされた者は対象とする拡大基準も設けられた。 原告は、大阪市内の淀川河川区域内の建物に居住するいわゆるホームレスであり、平成25年に住民基本台帳の記録が職権で消除された後、いずれの市区町村にも住民登録がなかった。原告は令和2年5月22日に給付金の支給を申請したが、基準日に住民基本台帳に記録がないことを理由に不支給とされた。原告は、被告大阪市に対し支給決定の義務付け、不支給決定の取消し、給付金を受給できる地位の確認等を求め、被告国及び被告大阪市に対し国家賠償法に基づく損害賠償30万円を求めて提訴した。 【争点】 1. 特別定額給付金の支給・不支給の決定が抗告訴訟の対象となる「処分」に当たるか 2. 給付金を受給できる地位の確認請求について確認の利益があるか 3. 給付対象者を住民基本台帳の記録に基づき定めた実施要領の給付基準が憲法14条1項(平等原則)、31条(適正手続)等に違反するか 【判旨】 裁判所は、争点1について、特別定額給付金の制度は法律に基づくものではなく、実施要領は市区町村の内部規則にすぎないから、支給・不支給の決定は行政処分に当たらないと判断し、義務付け請求、違法確認請求及び取消請求に係る訴えをいずれも却下した。 争点2について、給付金の法律関係は贈与契約と解されるが、行政目的の実現のための給付であり契約自由の原則に一定の制約が課されるとして、受給できる地位の確認訴訟は紛争解決の適切な手段であるとし、一部の確認請求について確認の利益を認めた。 争点3について、裁判所は、全国民への給付を具体化するにあたり、住民基本台帳を利用して給付対象者を定めたことは、膨大な事務処理の簡素化、迅速な給付の実現及び二重給付の防止という観点から合理的であるとした。ホームレス等の住民未登録者が給付対象から外れることについても、既存の支援制度(生活保護、生活困窮者自立支援制度等)を利用して住居を確保し住民登録を回復する可能性があったこと、二重給付を防止しつつ住民未登録者にも支給する仕組みを構築することが必ずしも容易ではないことを踏まえ、合理的な理由に基づくやむを得ないものであり、憲法14条1項に違反しないと判断した。憲法31条違反や信義則違反の主張も排斥し、国家賠償請求を含む原告の請求をいずれも棄却した。