相続税更正処分等取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被相続人Bの相続人である亡A、控訴人C及び控訴人Dは、相続により取得した不動産の価額を財産評価基本通達(評価通達)の定める方法により評価し、相続税の申告を行った。これに対し、処分行政庁は、相続財産のうち一部の土地及び建物について評価通達の定めにより評価することが著しく不適当であるとして、鑑定評価に基づき相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。本件不動産は、亡Aが相続税の負担軽減を目的として、銀行担当者の助言を受けて相続開始直前に15億円を借り入れて購入した賃貸用の中層共同住宅地であり、評価通達に基づく評価額(通達評価額)と鑑定評価額との間に5億円以上のかい離が生じていた。亡Aらはこれを不服として更正処分等の取消しを求めたが、原審(東京地裁)は請求をいずれも棄却し、控訴人らが控訴した。なお、亡Aは原審の口頭弁論終結後に死亡し、妻の控訴人Eが訴訟を受継した。 【争点】 主な争点は、①評価通達6に基づき通達の定める評価方法以外の方法で不動産を評価することが租税法律主義に反するか、②通達評価額と取引価格のかい離が一般的現象であり特別の事情に当たらないか、③本件不動産の購入が相続税対策目的であったか、④不動産鑑定評価の信用性である。控訴人らは、通達評価額によらない課税は予測可能性を害し行政庁の裁量逸脱であること、タワーマンション等でも同様のかい離は広く存在すること、本件不動産に形状や収益性の特殊性はないこと、購入は不動産賃貸業の一環であることなどを主張した。 【判旨】 東京高裁は原判決を維持し、控訴をいずれも棄却した。まず租税法律主義との関係について、相続税法22条は取得時の時価(客観的交換価値)による課税を定めており課税要件は明確であるとした上で、評価通達は画一的評価による公平・便宜・費用節減を図るものであるから、租税負担の実質的公平を著しく害することが明らかな場合にまで通達の定めにより評価すべきではなく、個別評価をしても租税法律主義に違反しないと判示した。予測可能性の点についても、亡Aは通達評価額と現実の取引価格の著しいかい離を十分認識して不動産を購入しており、現実の取引価格による課税について予測可能性がなかったとはいえないとした。次に、通達評価額と鑑定評価額のかい離が5億円以上に及び2分の1にも達しない著しいものである一方、このような著しいかい離が一般的であるとは認められず、タワーマンションの調査例は本件と事例を異にすると判断した。また、本件不動産の形状・利用形態は競合物件が少なく収益性が見込めるもので特殊性がないとはいえないこと、15億円の借入れによる3億円超の相続税圧縮効果を認識・期待して購入したことは特別の事情を基礎づける事実に当たること、購入経緯から相続税対策目的であったことは明らかであることをそれぞれ認定し、控訴人らの主張をすべて退けた。