手続却下処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 米国デラウェア州の法人である原告(ヴェニアム,インク.)は、特許協力条約(PCT)に基づき、米国特許商標庁を受理官庁として国際特許出願を行った。この出願は日本を指定国に含んでおり、特許法184条の3第1項により日本における特許出願とみなされた。原告は、優先日(平成27年9月22日)から2年6月の国内書面提出期間内に明細書等の翻訳文を提出する必要があったが、期限である平成30年3月22日までに提出できなかった。 期間徒過の原因は、原告が委任した米国の特許事務所における期限管理システム(IP Manager)への誤入力にあった。補助者事務員Dが期限管理ファイルを作成する際、優先日として最先の米国特許仮出願1の出願日(平成27年9月22日)を入力すべきところ、誤って米国特許仮出願2の出願日(平成27年12月16日)を入力した。この誤入力により、国内移行期限が実際より約3か月遅い平成30年6月16日と自動算出された。翌日Dが病欠したため代行したEも誤りに気付かず、その後の国内移行期限管理ファイル作成時にも誤った情報がそのまま転記された。原告は期間徒過につき「正当な理由」があるとして翻訳文を提出したが、特許庁長官は手続を却下する処分をした。原告はこの却下処分の取消しを求めて本訴を提起した。 【争点】 1. 国内書面提出期間の徒過について特許法184条の4第4項の「正当な理由」があるか。 2. 特許庁が外国語特許出願について補正命令(同法184条の5第2項)を発しなかったことが憲法14条、31条、22条に違反するか。 【判旨】 裁判所は原告の請求を棄却した。 争点1について、「正当な理由」があるときとは、出願人(代理人を含む)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて期間内に翻訳文を提出できなかった場合をいうと解した上で、本件特許事務所の対応は相当な注意を尽くしたとはいえないと判断した。具体的には、BからDへの期限管理ファイル作成依頼時に優先日が明確に伝達されたとは認められないこと、Dが入力すべき優先日を十分確認しなかったこと、出願後にA弁護士らが期限管理ファイルと出願書類の照合作業を行わなかったこと、Eによるダブルチェックも機能していなかったこと、国内移行期限管理ファイル作成時にも優先日の正確性が確認されなかったことを指摘した。原告は補助者の偶発的な錯誤であると主張したが、裁判所は、そもそも事態の発端はBが出願内容を十分理解していなかったことにあり、組織として補助者間の連絡体制や弁護士による指導・監督態勢が不十分であったと認定した。米国基準で判断すべきとの主張も、日本の特許法に基づく期間徒過には日本の基準が適用されるとして退けた。 争点2について、外国語特許出願では翻訳文未提出により出願が取り下げられたとみなされ、補正を命じる対象が消滅する以上、補正命令を発しないことに手続的瑕疵はなく、憲法14条・31条・22条のいずれにも違反しないとした。