AI概要
【事案の概要】 公益財団法人日本レスリング協会の強化本部長であった原告が、レスリング日本代表男子チームのコーチを務めていた被告に対し、名誉毀損による損害賠償を求めた事案である。原告は、女子レスリング選手らに対するパワー・ハラスメント(パワハラ)を内容とする告発状が弁護士によって内閣府公益認定等委員会に提出された際、被告がこの弁護士を介して出版社や新聞社に告発状提出の事実をリークさせ、週刊誌や新聞に虚偽の事実が掲載されたことで名誉を毀損されたと主張し、慰謝料及び弁護士費用合計330万円の支払を求めた。なお、レスリング協会が設置した第三者委員会は、原告が選手らに対して暴言を吐いたことや不当な代表選手選考を行ったこと等をパワハラと認定しており、原告はその責任を取って強化本部長を辞任し、常務理事も解任されていた。 【争点】 主な争点は、被告が弁護士を介して週刊文春及び新聞各社に対し告発内容をリークしたか否かである。原告は、告発状にはレスリング関係者でなければ知り得ない事実が記載されていること、告発状に被告が調査に応じる旨の記載があること、弁護士が内閣府の聞き取り調査に同席していたこと、別件で弁護士が被告の代理人を務めたこと等を根拠に、被告が弁護士に依頼して告発及びリークを行わせたと主張した。被告はこれを否認した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。まず、弁護士は被告の代理人名義ではなく自己名義で告発状を作成しており、情報提供は主に被告の大学レスリング部の先輩が行ったもので、被告に対しては内容の確認を求めたにとどまると認定した。告発状に被告しか知り得ない事実が記載されていたとしても、それだけでは被告がリークを依頼したとは推認できないとした。また、弁護士が内閣府の聞き取り調査に同席したのは告発者として要請されたためであり、被告の代理人であったとは推認できないとした。さらに、別件の弁明手続で弁護士が被告の代理人を務めたことも、時期が異なる告発についての代理関係を推認させるものではないとした。以上から、原告が主張する各事実を個別に検討しても総合しても、被告が弁護士を介して告発内容をリークしたことを推認するには足りないと判断した。