生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 生活保護受給者である原告ら(福岡県内在住)が、厚生労働大臣による平成25年・26年・27年の3度にわたる生活扶助基準の改定(本件各改定)に基づき、各処分行政庁から生活扶助費を減額する保護変更決定を受けたことについて、本件各改定は憲法25条及び生活保護法3条・8条等に違反する違憲・違法なものであるとして、各保護変更決定の取消しを求めるとともに、厚生労働大臣の行為が国家賠償法上違法であるとして、各10万円の慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案である。本件各改定は、社会保障審議会生活保護基準部会の検証結果に基づく年齢・世帯人員・居住地域別の較差是正(ゆがみ調整)と、近年のデフレ傾向を踏まえた消費者物価指数に基づく調整(デフレ調整)を内容とし、3年間の段階的実施やプラスマイナス10%の上限設定等の激変緩和措置を伴って実施されたものである。 【争点】 (1) 審査請求前置の有無(一部原告の訴えの適法性)、(2) 本件各改定の合憲性及び適法性(厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用の有無)として、ア)判断枠組み(裁量権の範囲、制度後退禁止原則の当否)、イ)ゆがみ調整の適否、ウ)デフレ調整の適否、エ)両調整を併せて行ったことの適否、オ)改定後の生活扶助基準の適否、(3) 国家賠償法上の違法性及び慰謝料額が争われた。 【判旨】 請求棄却(一部却下)。裁判所は、生活扶助基準の減額改定については、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広い裁量権が認められるとし、裁判所の審査は、判断の過程及び手続における過誤・欠落の有無、統計等の客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性の観点から行うべきとの枠組みを示した。憲法25条からの制度後退禁止原則については、同条は経済情勢により最低限度の生活水準が後退し得ることも予定しているとして否定した。ゆがみ調整については、基準部会の検証結果に基づき適切な手法で行われたと認定し、デフレ調整についても、生活扶助相当CPIを用いた物価下落率の算定手法に裁量権の逸脱・濫用はないとした。両調整の同時実施についても、ゆがみ調整は展開部分の是正、デフレ調整は絶対水準の調整であり、物価の二重評価には当たらないと判断した。激変緩和措置として3年間の段階的実施や増減幅の上限設定がなされ、約71%の世帯が5%以下の減額にとどまったことも考慮し、裁量権の逸脱・濫用は認められないと結論づけた。以上から、国家賠償法上の違法性も否定した。