AI概要
【事案の概要】 本件は、「通信ネットワークシステムにおけるコントロールチャネル」に関する特許(特許第5081296号)の無効審判についての審決取消訴訟である。この特許は、もともとノキア・シーメンス・ネットワークスが出願し、後に原告に譲渡されたもので、3GPP LTEネットワークにおけるコントロールチャネルのアロケーション及びデコーディングに関する発明である。ツリー構造のノードで表されるコントロールチャネルについて、最高レベルのアロケーションを制限し、低レベルのアロケーションを増大させることで、デコーディング試行数を低減しつつスケジューリングの柔軟性を維持する技術に関するものであった。 被告が特許無効審判を請求し、特許庁は、本件特許の請求項1ないし16に係る発明が特許法36条6項1号・2号又は同条4項1号の要件を満たさないとして、全請求項を無効とする審決をした。原告は審判手続中に訂正請求を行ったが、特許庁はこの訂正を認めなかった。原告は審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 原告が行った訂正請求が訂正要件を満たすか否かが争われた。具体的には、(1)訂正事項が明細書等に記載した事項の範囲内か(新規事項の追加に当たらないか、特許法126条5項)、(2)訂正が特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでないか(同条6項)の2点が主な争点であった。訂正の核心は、「コントロールチャネルの比較的低いレベルのアロケーションを増大させる」という抽象的な記載を、各レベルにおけるコントロールチャネル候補の「割合」の大小関係を具体的に特定する記載に改める点にあった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、訂正事項3(請求項1関係)について、新規事項の追加には当たらないと判断した。明細書の記載及び図4を総合すると、各レベルにおけるコントロールチャネル候補の割合の大小関係は開示されているか、開示されているに等しい事項であるとした。 しかし、特許請求の範囲の拡張又は変更の要件については、訂正前の請求項1が「最高レベルのアロケーションを制限し、低レベルのアロケーションを増大させる」という構成であったのに対し、訂正後は「コントロールチャネル候補の割合」という訂正前にはない概念を追加し、各レベル間の割合の大小関係を特定してアロケートする構成に変更するものであるから、特許請求の範囲を実質上変更するものであるとした。原告は明細書に記載された技術的構成が訂正前後で同一であると主張したが、裁判所は、拡張・変更の判断は特許請求の範囲の記載を基準とすべきであり、明細書記載の技術的構成の同一性をもって請求の範囲の実質的同一性を根拠づけることはできないとして退けた。請求項8及び11に係る訂正についても同様に判断し、本件訂正を認めなかった審決の判断は結論において相当であるとした。