運転免許取消処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(当時29歳、外壁工事業)は、平成30年12月6日午後1時頃、大阪府岸和田市内の丁字路交差点において、普通貨物自動車(ダイハツ・ハイゼット)を時速約30kmで直進進行中、一時停止せず交差道路から進入・左折してきた女子高校生の自転車と接触し、被害者に全治約21日間の尾骨剥離骨折等の傷害を負わせる交通事故を起こした。原告は事故後、停車して被害者を救護することなく走り去った。 大阪府公安委員会は、原告に救護義務違反(道路交通法117条)があったとして、平成31年1月16日付けで運転免許を取り消す処分及び4年間の欠格期間を指定する処分(本件各処分)をした。一方、刑事事件においては、大阪地方裁判所岸和田支部が令和元年7月2日、過失運転致傷により禁錮6月(執行猶予4年)の刑に処しつつ、救護義務違反の点については原告に事故の認識がなかったとして無罪判決を言い渡し、同判決は確定した。本件は、原告が本件各処分の取消しを求めた事案である。 【争点】 原告が本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて確定的又は未必的な認識を有していたか否か、すなわち救護義務違反の成否が争点となった。被告(大阪府)は、接触時の衝撃音の大きさ、原告がルームミラーで転倒した被害者を目撃したこと、捜査段階での原告の供述内容等を根拠に、原告は事故の認識を有していたと主張した。これに対し原告は、接触の衝撃は軽微で事故と認識できず、「コン」という音は車両後部の工具類の音と思い、転倒した女性は自ら転んだものと考えたと主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも認容し、本件各処分を取り消した。 まず判断枠組みとして、救護義務は運転者が被害者の死傷の事実を未必的にしろ認識した場合に限り発生するとした(最大判昭和40年10月27日等参照)。その上で、(1)原告車両の損傷は擦過痕又は払拭痕にとどまり大きな凹みはなく事故の程度は比較的軽微であったこと、(2)接触は同方向に進む車両同士の追い抜き時に生じたもので、被害者は運転席から見えにくい左前方に位置していたこと、(3)目撃者の衝撃音に関する供述は自転車の転倒音との混同の可能性があり信用できないこと、(4)原告は音楽を聴きハンバーガーを食べながら運転しており注意散漫な状態にあったことを認定した。これらの事情を総合し、原告が事故の認識を有していなかった旨の供述は十分に信用できると判断し、原告は本件事故により被害者に傷害結果が生じたことについて確定的にも未必的にも認識を有していたとは認められないとして、救護義務違反は成立しないと結論づけた。