AI概要
【事案の概要】 消費者裁判手続特例法(以下「法」という。)に基づき内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体である原告が、仮想通貨関連商品を販売した被告会社及びその勧誘に関与した被告Bに対し、共通義務確認の訴えを提起した事案である。 被告会社は、平成28年10月頃から、仮想通貨の稼ぎ方を解説する「仮想通貨バイブル」(約4万9800円〜5万9800円、購入者約4000人)、追加特典付きの「VIPクラスセット」(約9万8000円、購入者約1500人)、及びAIが自動で資産を増やすと謳う「パルテノンコース」(約49万8000円、購入者約1200人)を販売した。被告Bは、勧誘動画への出演やセミナー講師としてこれらの商品の販売に深く関与していた。 原告は、被告らがウェブサイト上で「日本人全員を億万長者にする」「日給3万円〜30万円の不労所得」「AIが24時間365日お金を増やし続ける」等の虚偽又は著しく誇大な効果を強調した勧誘を行い、消費者に商品を購入させたことが不法行為に該当すると主張し、法3条1項4号に基づき、売買代金相当額等の損害賠償に係る共通義務の確認を求めた。 【争点】 主な争点は、共通義務確認訴訟の訴訟要件である①多数性、②支配性、及び③被告Bの被告適格であった。特に支配性に関しては、過失相殺の判断が個々の消費者ごとに異なるか否かが中心的な争点となった。被告Bは、消費者の投資経験や購入動機は個々に異なるため過失相殺の判断が個別的にならざるを得ず、簡易確定手続での迅速な判断は困難であると主張した。原告は、被告らの勧誘の違法性が重大であるから過失相殺すべきでなく、仮に過失を認定するとしても消費者に共通の過失であり一律判断が可能であると反論した。 【判旨】 裁判所は、本件訴えをいずれも却下した。 多数性の要件については、各商品の購入者が約1200人〜約4000人に上ることから、既に和解により被害回復が図られた44名を除いてもなお「相当多数の消費者」に該当するとして、要件を充足すると認めた。 しかし、支配性の要件については、次の理由から充足しないと判断した。すなわち、仮に被告らの勧誘が不法行為に当たるとしても、そもそも投資により確実に稼ぐ方法があるとは容易に想定し難い上、対象消費者ごとに投資の知識・経験の有無及び程度、職務経歴、購入に至る経緯等の事情は様々であるから、勧誘内容を信じたことにつき過失相殺すべき事情がおよそないとはいえないとした。そして、過失の有無や過失相殺割合の認定・判断には対象消費者ごとに相当程度の審理を要するため、「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」(法3条4項)に当たるとした。また、被告らの勧誘は架空の取引を勧誘したものではなく、商品の提供が一定程度認められることから、過失相殺を排除するほど違法性が重大であるとはいえないとし、消費者の過失が共通で一律判断可能であるとの原告の主張も退けた。 本判決は、消費者裁判手続特例法に基づく共通義務確認訴訟において、過失相殺の個別性を理由に支配性の要件を否定した事例として、同法の運用上重要な先例的意義を有する。