各損害賠償請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30受1447
- 事件名
- 各損害賠償請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2021年5月17日
- 裁判種別・結果
- 判決・その他
- 裁判官
- 深山卓也、池上政幸、小池裕、木澤克之、山口厚
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、主に神奈川県内において建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患した建設作業従事者ら(被災者70名)又はその承継人である原告らが、被告国に対しては、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、被告建材メーカーら6社に対しては、石綿含有建材の危険性を表示することなく製造販売したことにより原告らが石綿関連疾患にり患したとして不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。石綿は耐熱性等に優れた鉱物で建材等に広く使用されてきたが、粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な疾患を引き起こし、いずれも潜伏期間が長く、肺がん及び中皮腫には閾値がないとされている。原審(東京高裁)は、被告国の規制権限不行使の違法を昭和56年1月1日から平成7年3月31日までと認定し、いわゆる一人親方等は保護対象外とした。建材メーカーについては、中皮腫り患者に民法719条1項後段を適用して3分の1の連帯責任を認め、それ以外の疾患にはマーケットシェアに応じた分割責任とした。 【争点】 (1) 被告国の規制権限不行使が違法となる時期はいつか。(2) 規制権限不行使の違法が解消される時期はいつか。(3) 安衛法に基づく規制権限の保護対象に一人親方等の労働者に該当しない者が含まれるか。(4) 建材メーカーの損害賠償責任について民法719条1項後段の適用・類推適用の可否と範囲。(5) 一旦使用された石綿含有建材に後から作業をする者に対する警告表示義務の有無。 【判旨】 最高裁は、原判決の一部を破棄し差し戻した。まず国の責任について、労働大臣は昭和50年10月1日(改正特化則施行日)には規制権限を行使して、石綿含有建材の表示・掲示として重篤な石綿関連疾患の危険性と防じんマスク着用の必要性を具体的に示すよう指導監督し、事業者に呼吸用保護具の使用を義務付けるべきであったとして、原審より5年以上遡る時点で違法を認定した。違法状態の終期については、平成16年10月1日(石綿含有建材の製造等禁止の施行日)まで継続するとし、原審の平成7年3月31日を大幅に延長した。安衛法57条の表示義務及び掲示義務は、物や場所の危険性に着目した規制であり、労働者に該当しない一人親方等も保護対象に含まれると判断した。建材メーカーの責任について、民法719条1項後段の適用には、被害者が特定した行為者以外に損害を惹起し得る者が存在しないことが要件であるとして原審の解釈を否定したが、本件の諸事情のもとでは同項後段の類推適用により被告建材メーカーらは3分の1の連帯責任を負うとした。中皮腫以外の石綿関連疾患についても同様に類推適用を認め、マーケットシェアに基づく分割責任とした原審を変更した。さらに、石綿含有建材の警告表示義務は、建材を最初に使用する者に対してのみならず、一旦使用された後に当該建材に作業をする者に対しても負うとして原審判断を覆し、被告太平洋セメントの警告義務違反の認定及び被告ノザワのモルタル混和剤の安全性に関する原審の判断も経験則違反として破棄した。裁判官全員一致の意見。