損害賠償請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成31受491
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2021年5月17日
- 裁判種別・結果
- 判決・その他
- 裁判官
- 深山卓也、池上政幸、小池裕、木澤克之、山口厚
- 原審裁判所
- 大阪高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより肺がんに罹患したとされるAおよびBの承継人である原告らが提起した損害賠償請求事件である。原告X1は、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために、労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であると主張し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。原告X2らは、被告積水化学工業に対し、石綿含有建材を使用すると石綿関連疾患に罹患する危険があること等の警告表示をせずに製造販売したことにより、屋外の建設現場で石綿含有建材の切断・設置等の作業に従事していたBが肺がんに罹患したと主張し、不法行為に基づく損害賠償を求めた。原審は、国の責任については、安衛法の保護対象は労働者に限られるとしてAが事業主(いわゆる一人親方)であることを理由に請求を棄却し、積水化学工業の責任については、屋外建設作業でも屋内と同程度の石綿粉じんばく露があったとして警告表示義務違反を認め、請求を一部認容した。 【争点】 第1の争点は、労働大臣の安衛法に基づく規制権限不行使の違法が、労働者に該当しない建設作業従事者(一人親方等)との関係でも認められるか、また、Aの石綿粉じんばく露と石綿関連疾患罹患の事実認定の当否である。第2の争点は、建材メーカーである積水化学工業が、屋外建設作業に従事する者に対し、石綿含有建材に警告表示をすべき義務を負っていたか否かである。 【判旨】 最高裁は、第1の争点について原審判断を破棄した。労働大臣の規制権限は、労働者のみならず、労働者に該当しない建設作業従事者を保護するためにも行使されるべきであったとし、一人親方等も国家賠償法上の保護対象に含まれると判断した。また、原審がAの石綿粉じんばく露に関する陳述書や本人尋問の供述、医師の意見書等の具体的証拠を検討することなく請求を棄却した点にも法令違反があるとして、更に審理を尽くさせるため原審に差し戻した。第2の争点については、屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果は屋内作業の測定結果を大きく下回っており、屋外では風等による自然換気で粉じん濃度が薄められること、切断作業は就業時間中の限られた時間であることから、屋外で屋内と同程度の高濃度ばく露が継続するとはいえないとした。したがって、積水化学工業が屋外建設作業従事者への警告表示義務を負っていたとはいえないとして原審判断を破棄し、原告X2らの控訴を棄却した。裁判官全員一致の意見である。