損害賠償請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成31受290
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2021年5月17日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 深山卓也、池上政幸、小池裕、木澤克之、山口厚
- 原審裁判所
- 大阪高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 屋根工として屋外の建設現場で石綿(アスベスト)含有建材の切断・設置等の作業に従事し、石綿粉じんにばく露したことにより中皮腫にり患したとされるAの承継人(被上告人ら)が、①国に対し、労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を、②建材メーカー2社(ケイミュー及びクボタ)に対し、石綿含有建材に石綿関連疾患のり患危険性を表示せずに製造販売したことが不法行為に当たるとして損害賠償を、それぞれ求めた事案である。原審(控訴審)は、屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果に日本産業衛生学会の勧告値(0.15本/㎤)や諸外国の規制値(0.1本/㎤)を上回るものが複数存在したことから、国及び建材メーカーらは平成13年中に危険を認識できたとして、いずれの請求も一部認容した。 【争点】 国及び建材メーカーらが、平成13年から平成16年9月30日までの期間に、屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたか否か。具体的には、屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の各種測定結果から、規制権限の行使義務(国)及び表示義務(建材メーカー)の前提となる危険の認識可能性が認められるかが争われた。 【判旨】 最高裁は、原審の判断を破棄し、被上告人らの請求をいずれも棄却した。その理由として、①原審が指摘する測定結果のうち一部は当該期間中に認識し得なかったものであること、②勧告値0.15本/㎤は法令上の規制値ではなく、その数値以上の濃度に短時間ばく露することで直ちに過剰発がんリスクが発生するものではないこと、③0.15本/㎤以上の測定結果は主に切断作業中の限られた時間の個人ばく露濃度であり、就業時間を通じた継続的ばく露を示すものではないこと、④屋外建設作業に係る測定結果全体が屋内作業に係る測定結果を大きく下回り、これは屋外では風等による自然換気で石綿粉じん濃度が薄められるためであることを挙げた。以上から、国及び建材メーカーらが屋外建設作業従事者の石綿関連疾患り患の危険を認識できたとはいえず、国の規制権限不行使は国家賠償法上違法とはいえないとし、建材メーカーらの表示義務も認められないと判断した。裁判官全員一致の意見である。