詐欺被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、いわゆる特殊詐欺の「受け子」として荷物を受領した被告人が、詐欺罪で起訴された事件の控訴審判決である。被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、架空の民事訴訟取下げ費用名目で現金をだまし取ろうと企て、平成30年10月、「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」と記載したはがきを被害者に送付し、電話で訴訟取下げに200万円が必要であるとうそを言って被害者を誤信させた。被害者は、東京都新宿区内のアパートの一室宛てに現金200万円在中の宅配便荷物を送付し、被告人が同アパート付近で居住者に成り済まして荷物を受領した。原審(山口地方裁判所宇部支部)は被告人を有罪としたが、被告人は事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 被告人に特殊詐欺についての故意(荷物の中身が詐欺による現金であることの認識)及び氏名不詳者らとの共謀が認められるか。被告人は、荷物の中身が現金であるとは思わなかった、知人Bに対して特殊詐欺の仕事を紹介したこともないと主張し、無罪を主張した。 【判旨(量刑)】 広島高等裁判所は、控訴を棄却した。まず、原判決の証拠評価について、被告人が「荷物を受け取るだけで金になる仕事として受領を行った」等の事情を被告人供述のみから認定しながら、他の部分の信用性を否定した点に整合性の欠如を指摘し、この点で原判決の証拠評価には誤りがあるとした。しかし、結論において被告人に故意及び共謀を認定した原判決に誤りはないとして、独自の推認過程を示した。具体的には、①他人のアパート居室にわざわざ出向き、居住者に成り済まして荷物を受け取るという依頼内容自体の不自然さから、被告人は荷物の受領が特殊詐欺を含む犯罪行為の一端であると認識し得たこと、②証人Bの供述により、被告人が本件の数か月前には既に特殊詐欺組織と関係を持ち、現金引き出し役を勧誘するなど活動に協力していた状況が認められること、③被告人の弁解は、報酬目的で依頼に応じたにもかかわらず報酬金額も依頼者の名前も確認しなかったという不自然なものであり、荷物の中身が現金や詐欺に関係する可能性を排除できた理由が全く示されておらず不合理であることを総合し、被告人には確定的故意及び共謀が認められると判断した。弁護人が指摘する、指示役から情報提供がなかったこと、同種経験がないこと、当時この手法が社会的に周知されていなかったことについては、推認を強める事情の不存在にすぎず、推認の障害とはならないと退けた。