AI概要
【事案の概要】 被告人は、共犯者Aと共謀の上、平成31年2月から3月にかけて、札幌市内や北海道内のスーパーマーケット等で買い物中の客のカートからバッグを窃取する犯行を3件行い(第1、第3、第4)、うち1件では窃取したクレジットカードを使用して眼鏡店で商品をだまし取ろうとしたが事故カードと見破られ未遂に終わった(第2)。また、令和元年12月1日、勤務先の経営を巡るトラブルから、経営者Dに対しラチェットレンチで頭部を殴打し、さらに果物ナイフを顔面直近で振り回して全治約14日間の傷害を負わせた(第5)。被告人は窃盗・詐欺未遂の各犯行への関与を否認し、傷害事件では正当防衛ないし誤想防衛を主張した。なお、同種手口の別件窃盗(4月事件)も追起訴されていた。 【争点】 窃盗・詐欺未遂事件の争点は、被告人がAの共犯者として各犯行に及んだ犯人といえるか(犯人性)である。弁護人は、各犯行を被告人と共に行ったとするAの証言の信用性を争い、全件無罪を主張した。傷害事件の争点は、(1)ラチェットレンチによる頭部殴打及び果物ナイフによる暴行の態様、(2)各暴行について正当防衛又は誤想防衛が成立するかである。 【判旨(量刑)】 裁判所は、窃盗・詐欺未遂(第1〜第4)について、共犯者Aの証言の核心部分の信用性を慎重に検討した。第1・第2の犯行については、被害店従業員の写真面割りで共犯者が被告人に似た人物と特定されたこと、被告人方から犯行時の共犯者と同じ特徴の黒色ジャンパーが押収されたことなどから、Aの証言は積極的に裏付けられるとした。第3・第4の犯行については、Aが被告人への逆恨みから虚偽証言をする危険が高まった事情を認めつつも、各犯行に被告人がEから借りた車両が使用されていた客観的事実がAの証言と整合するとして、信用性を肯定した。一方、4月事件については、顔貌鑑定でも同一人とは判断できず、犯行に使用された車両も異なるなど裏付けが不十分であるとして、Aの証言を信用できないと判断し、無罪を言い渡した。傷害事件については、証人らの証言や法医学鑑定を総合し、ラチェットレンチによる頭部殴打と果物ナイフによる顔面切創の事実を認定した。正当防衛・誤想防衛の主張については、被告人が玄関に出た時点でDらは攻撃を仕掛ける動きをしておらず、被告人がラチェットレンチで先制攻撃を行ったこと、一度制止された後に再び果物ナイフを持ち出して攻撃したことから、いずれも成立しないとした。量刑については、凶器を用いた粗暴で危険な傷害の態様、常習性の高い職業的な窃盗犯行、累犯前科の刑の執行終了からわずか2か月での再犯であることなどを重視し、求刑懲役8年に対して懲役5年を言い渡した。