業務上横領被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2う851
- 事件名
- 業務上横領被告事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2021年5月21日
- 裁判種別・結果
- 破棄自判
- 裁判官
- 近藤宏子、藤井俊郎、三上孝浩
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 被告人は、株式会社Bの代表取締役を務めていた人物である。Bの取締役兼財務経理部長として経理業務を統括していたCと共謀し、平成24年7月5日、Cが情を知らない経理担当職員に指示してインターネットバンキングを通じ、B名義の預金口座から約2415万円を、被告人とCが管理する架空会社の口座に振り込ませて横領したとされる事案である。被告人とCは、実在する会社と同一名称の架空会社(偽I社)を設立し、偽造した支払委託契約書を作成するなどして犯行に及んだ。原審(第一審)では、公訴時効の成否が争点となり、被告人には業務上占有者の身分がないため単純横領罪(法定刑5年以下の懲役)の刑を基準に時効期間を5年と解して免訴を言い渡していた。検察官がこれを不服として控訴した。 【争点】 業務上占有者の身分を有しない共犯者(被告人)について、公訴時効期間の基準となる「刑」は、成立する犯罪(業務上横領罪)の法定刑か、それとも科刑上適用される単純横領罪の法定刑か。業務上横領罪の法定刑(10年以下の懲役)を基準とすれば時効期間は7年で時効未完成、単純横領罪の法定刑(5年以下の懲役)を基準とすれば時効期間は5年で時効完成となる。また、被告人とCとの間の共謀の有無も争われた。 【判旨(量刑)】 東京高裁は、原判決を破棄し、被告人を懲役2年に処した。公訴時効期間の基準となるのは「成立する犯罪事実」の法定刑であり、「科刑の基準となる犯罪事実」ではないと判示した。刑訴法250条は犯罪の法定刑を基準に時効期間を定め、同252条は加重減軽をしない刑に従うべき旨を規定しており、時効期間は犯罪事実自体の罪種及び法定刑の軽重を基準として定められることは明らかであるとした。また、共犯者間の時効起算点や時効停止の統一的取扱いを定めた刑訴法253条2項・254条2項の趣旨にも沿うとした。被告人には刑法65条1項・60条により業務上横領罪が成立する以上、時効期間は同罪の法定刑(10年以下の懲役)を基準に7年であり、犯行日(平成24年7月5日)から公訴提起日(令和元年5月22日)まで約6年10か月であるから時効は完成していないと判断した。共謀の点についても、Cの供述が客観的証拠により裏付けられている一方、被告人の弁解は不自然・不合理であるとして、共謀の成立を認定した。量刑については、計画的かつ巧妙な犯行態様、被害額の高額さ、被害弁償がないこと等を考慮しつつ、被告人が業務上占有者の身分を有していなかったこと、前科がないことを勘案して懲役2年とした(求刑懲役4年)。