特許権侵害行為差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「挿入式クラスプ」に関する特許権(アクセサリーの留め具に関する発明)を有する控訴人(原告)が、被控訴人(被告)である有限会社宝石のエンジェルが製造・販売する製品(被告製品)が本件特許権の技術的範囲に属すると主張して、特許法100条1項・2項に基づく差止め及び廃棄、並びに不法行為に基づく損害賠償2000万円の支払を求めた事案の控訴審である。本件特許の「挿入式クラスプ」は、磁力を利用してネックレス等のアクセサリーの着脱を容易にする留め具であり、筐体内部の磁気誘導部材ホルダに挿入部が磁力で自動的に導かれて接続される仕組みを特徴とする。原審(東京地裁)は控訴人の請求を棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主要な争点は以下のとおりである。(1)被告製品が構成要件C・Fの「第1の磁気誘導部材ホルダ」を充足するか(被告製品では磁気誘導部材とホルダが強磁性材料で一体成型されている点)、(2)構成要件Dの「第2の磁気誘導部材ホルダ」を充足するか(被告製品では第2のフレームと一体化されている点)、(3)被告製品が本件発明と「均等」であるか(均等侵害の5要件の充否)、(4)本件特許が無効審判により無効にされるべきものか、(5)損害額。特に、特許出願時の意見書で控訴人が述べた「第2の磁気誘導部材ホルダ」と「筐体」の関係についての主張が、均等論の第5要件(意識的除外)との関係で重要な争点となった。 【判旨】 知財高裁は控訴を棄却した。まず、本件発明の技術的意義について、「第2の磁気誘導部材ホルダ」に「挿入空間」が設けられているため、接続時・解除時に第1の磁気誘導部材がガイドされ、操作が容易になることが含まれると認定した。構成要件Dの充足性については、被告製品では「第2の磁気誘導部材ホルダ」が「第2のフレーム」(筐体の一部)と一体化されており、本件発明が求める筐体とは別体の「第2の磁気誘導部材ホルダ」を備えていないと判断した。控訴人が出願手続中の意見書で述べた記載は、「第2の磁気誘導部材ホルダ」と「筐体」が別部材であることを前提としたものと認定した。均等侵害についても、被告製品の「半円筒凹部」は開口時にガイド機能を果たさないため、本件発明の「挿入空間」と同様の作用効果を有するとは認められず、本件発明と本質的部分を同一にしているとはいえないとして、均等の第1要件・第2要件をいずれも否定した。