AI概要
【事案の概要】 デザイン書等の出版社である原告(パイインターナショナル)が、児童書等の出版社である被告(永岡書店)に対し、被告が出版した手帳「願いを叶える手帳2020」のカバーデザインが、原告が出版した書籍「100枚レターブック 西洋の美しい装飾」のカバーデザインの著作権及び著作者人格権を侵害するとして、被告書籍の複製・頒布の差止め及び廃棄、並びに損害賠償金約127万円の支払いを求めた事案である。 原告書籍のカバーデザインは、書籍デザイナーであるAが制作したものであり、原告はAとの間で出版契約を締結して当該書籍を出版していた。被告は令和元年6月頃、同じデザイナーAに手帳の表紙デザインの制作を依頼し、Aから提供を受けたカバーデザインを用いて被告書籍を出版した。原告は、自社が本件書籍の共同著作者であるか、少なくともAから著作権持分の譲渡を受けた共有著作権者であると主張し、被告カバーデザインが原告カバーデザインの複製又は翻案に当たると訴えた。 【争点】 主な争点は、(1)原告書籍が原告とデザイナーAの共同著作物であるか、(2)原告がAから著作権持分の譲渡を受けたか、(3)被告カバーデザインが原告カバーデザインの複製又は翻案に当たるか、(4)デザイナーAによる利用許諾の抗弁の成否、(5)損害額等であった。原告は、奥付の著作権表示(Cマーク)に基づく著作権法14条の推定や、担当編集者のデザインへの創作的関与を根拠に共同著作者であると主張した。また、紛争顕在化後にAが作成した確認書を根拠に、著作権持分の譲渡も主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず争点(1)について、出版契約ではAが「著作権者」とされ、原告は「出版者」として複製・頒布の許諾を受ける立場であったこと、カバー表面に「DESIGNED BY A」と明記されていたことから、仮にCマーク表示による著作権法14条の推定が働くとしても、上記の事情により推定は覆されるとした。また、原告の担当編集者がイラスト素材の提供やデザインについてAと協議を重ねたとしても、それは補助的な関与にすぎず、共同著作者として認められる程度の創作的関与があったとは認められないと判断した。 争点(2)については、紛争顕在化後に作成されたAの確認書は、出版契約の内容と整合せず「唐突かつ不自然」であり、確認書の作成経緯についても合理的な説明がないとして、著作権持分の譲渡を認めなかった。なお、原告がAの陳述書の提出や証人尋問の申出をしなかったことも指摘された。 以上により、原告は本件書籍の著作権を有していないとして、その余の争点(複製・翻案の成否等)を判断するまでもなく、請求はすべて棄却された。