更正処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 父子世帯の父親である原告は、妻と離婚後、3人の子の親権者として子らと生計を一にしていた。原告は、自身が所得税法2条1項31号の「寡夫」に該当するとして、平成24年分から平成26年分の所得税について寡夫控除(27万円)を適用して確定申告した。しかし、川崎北税務署長は、原告の各年分の合計所得金額がいずれも500万円を超えていたため、寡夫控除の所得要件(合計所得金額500万円以下)を満たさないとして、各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。また、原告が平成27年分から平成29年分について寡夫控除の適用を求めた更正の請求に対しても、更正すべき理由がない旨の各通知処分をした。 当時の所得税法では、扶養親族のある寡婦(30号イ)には所得要件が課されていなかったのに対し、寡夫には合計所得金額500万円以下という所得要件が設けられていた。原告は、この男女間の取扱いの差異が性別による差別として憲法14条1項に違反し、所得要件に係る部分は無効であると主張して、各処分の取消しを求めた。なお、原告は地方税法の寡夫控除規定についても別件訴訟を提起していたが、最高裁で請求棄却が確定していた。 【争点】 寡夫控除に寡婦にはない所得要件(合計所得金額500万円以下)を設けた所得税法の規定が、憲法14条1項に違反し無効であるか。また、過少申告加算税の賦課決定処分につき国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 まず判断枠組みについて、租税法の分野における取扱いの区別は、立法目的が正当であり、具体的に採用された区別の態様が目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法14条1項に違反しないとする最高裁昭和60年判決の基準を採用した。原告は性別に基づく差別であるから厳格審査基準によるべきと主張したが、裁判所は、性別も所得控除の対象者に係る属性の一つであり、立法府の裁量的判断を尊重すべきことは他の属性と異ならないとして退けた。 立法目的については、母子世帯の母親と父子世帯の父親との租税負担能力の差異に鑑み、財源面の制約を考慮しつつ寡婦にのみ認められていた所得控除を必要な範囲で寡夫にも及ぼすことにあったとし、正当であると判断した。 区別の態様については、統計上、父子世帯の父親は母子世帯の母親と比べ平均年間収入が大幅に高く、正規雇用の割合も高いなど、総体として高い租税負担能力を有していると認定した。原告は、所得500万円超の基準超過層では母子世帯の母親の方が平均年収が高いと指摘したが、裁判所は、基準超過層の母子世帯の割合が約2%と少数であること等に照らし、総体的な租税負担能力の差異を重視した制度を維持することにも相応の合理性があるとした。令和2年税制改正で男女統一的なひとり親控除が導入されたことを考慮しても、改正前の規定が著しく不合理であったとはいえないと結論づけた。 過少申告加算税についても、国税通則法65条4項の「正当な理由」に該当する事由は認められないとして、各賦課決定処分は適法とした。