AI概要
【事案の概要】 原告(NISSHA株式会社)は、「マイクロニードルパッチとその梱包体」に関する特許出願について拒絶査定を受け、不服審判を請求したが、特許庁は請求不成立の審決をした。本願発明は、支持体の上に油溶性成分を含むオイルゲルが形成された皮膚に粘着性を有するオイルゲルシートと、そのシート上に貼り合わされたシート状基体、及び基体上に形成された複数の微小針を備えたマイクロニードルパッチに関するものである。マイクロニードルパッチとは、微小な針を皮膚に刺して美容成分等を投与する製品であり、皮膚に固定するための粘着シートが必要となる。従来の粘着シートにはアクリル系粘着剤等が用いられていたが、粘着部分から美容効果が得られないこと、乳液等を塗布した皮膚では粘着力が弱まり剥がれやすいことが課題であった。本願発明は、粘着層としてオイルゲルシートを用いることで、これらの課題を解決しようとするものである。審決は、引用発明(微小針付きデバイス)に引用技術2(油性ゲル状粘着製剤)を組み合わせれば本願発明に容易に想到できるとして、進歩性を否定した。 【争点】 本願発明の「オイルゲル」の技術的意義が主たる争点となった。被告(特許庁長官)は、「オイルゲル」とは有機溶剤を溶媒とするゲルの総称であり、アクリル系粘着剤を基剤としたものも含まれるから、引用技術2の「油性ゲル状粘着製剤」は本願発明の「オイルゲル」に該当すると主張した。これに対し原告は、オイルゲルは物理架橋ゲルに属し、化学架橋ゲルであるアクリル系粘着剤とはゲル化の機構が全く異なるため、引用技術2の油性ゲル状粘着製剤は本願発明のオイルゲルに当たらないと主張した。 【判旨】 裁判所は審決を取り消した。まず、本件明細書の記載を参酌し、本願発明の「オイルゲルシート」は「アクリル系粘着剤等の粘着性ではなく、ゲル化したオイルの粘着性によって皮膚に対して粘着するシート」を意味すると解釈した。次に、引用技術2の「油性ゲル状粘着製剤」は、架橋アクリル系粘着剤の組成を調整したものであり、皮膚への粘着性は専らアクリル系粘着剤に依存していると認定した。そのうえで、引用技術2の油性ゲル状粘着製剤は本願発明のオイルゲルとは技術的意義を異にするから、引用発明に引用技術2を適用しても本願発明の構成には至らないとして、進歩性に関する審決の判断に誤りがあると結論づけた。なお、被告が主張した「オイルゲル」は有機溶剤を溶媒とするゲルの総称であるとの技術常識についても、化粧品分野ではオイルを固化剤でゲル化したものを指す用法も一般的であったことを指摘し、被告の主張を退けた。