職務発明対価等請求控訴事件,同附帯控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(株式会社セガ)の元従業員であった控訴人が、在職中に職務発明をしたとして、特許法35条3項に基づき相当の対価4000万円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。控訴人は、競馬ゲーム「スターホース」シリーズに関し、①被控訴人の特許となっている競争ゲームのベット制御方法の発明(共同発明者4人のうちの1人)と、②特許となっていない競馬ゲームのノウハウ(本件ノウハウ)を単独で発明したと主張し、①について885万余円、②について約3115万円の対価を請求した。本件ノウハウの核心は、完全確率抽選方式の下で予想ゲーム(馬券購入)と馬主ゲーム(競走馬育成)を公平に組み合わせるため、「活力値」という独自の指標を導入して馬ごとのメダル獲得の期待値を均等化した点にある。原審(東京地裁)は、①について17万0625円及び遅延損害金の限度で認容し、②については対価請求権を否定して棄却した。控訴人は原判決の変更を求めて控訴し、被控訴人は敗訴部分の取消しを求めて附帯控訴した。 【争点】 1. 本件発明1-2(ベット制御方法に関する別の発明)の実施の有無 2. 本件ノウハウに係る対価請求権の有無(ノウハウが特許性を有する発明といえるか) 3. 本件発明1-1の対価請求権に係る消滅時効の成否 4. 相当の対価の額(売上高の算定基礎にハードウェア価格や直営店収入を含めるべきか等) 【判旨】 知財高裁は、原審の判断をいずれも支持し、控訴及び附帯控訴をともに棄却した。 争点1について、被控訴人が被告製品2を製造販売することによって本件発明1-2を実施していたとはいえないと判断した。控訴人は原判決の事実認定に誤りがあると主張したが、その認定の誤りが実施の有無の判断にいかなる影響を与えるかを具体的に主張しておらず、失当であるとした。 争点2(本件の中心的争点)について、特許登録されていない職務発明であっても、特許性を有する発明でなければ独占の利益は生じず、対価請求はできないとの法的枠組みを示した上で、控訴人が主張するノウハウの4つの特徴(①活力値の導入、②期待値の均等化、③暫定値を用いた計算方法、④プレイヤーに認識されない形での活力値の増減)をそれぞれ検討した。その結果、①は予想ゲームと馬主ゲームを組み合わせる際に必然的に必要となる指標の導入にすぎず、②は課題解決のために当然に採られ得る手段であり、③は通常よく採られる計算方法を超えるものではなく、④は①〜③の当然の結果にすぎないとして、本件ノウハウは特許性を有する発明とは認められないと結論づけた。 争点3について、スターホースプログレスリターンズ以外の機種に関する対価請求権は消滅時効により消滅したと判断し、控訴人の債務承認や信義則違反の主張を排斥した。 争点4について、売上高の算定基礎にハードウェア価格を含めるべきとの控訴人の主張は、本件発明がソフトウェアに係るものであることから採用せず、直営店収入の加算も独占の利益を表すものとはいえないとして退けた。結局、相当の対価は原審認定のとおり17万0625円と判断された。