不当利得請求権行使請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 広島県民であり納税者である原告らが、参議院議員(広島選挙区)であったAが公職選挙法221条違反(買収)の罪により刑に処せられ、同法251条により当選が無効となったことを受けて提訴した事案である。原告らは、Aがそれまで受領してきた歳費、期末手当及び文書通信交通滞在費は法律上の原因を欠く不当利得であると主張し、納税者ないし国民としての資格に基づき、国を相手に、Aに対する不当利得返還請求権の行使を求めた(客観訴訟)。 地方自治法上の住民訴訟制度では、地方議員に対する違法な公金支出の是正を求めることが認められている。原告らは、国会議員について同様の訴えが認められないのは憲法14条1項(法の下の平等)に違反すると主張し、いわば「国民訴訟」とでもいうべき訴訟類型の承認を求めた。本件は、地方レベルでは住民訴訟として可能な公金返還請求が、国レベルでは認められるかという制度的空白の問題を提起した事案である。 【争点】 本件訴えが裁判所の審判権の対象となる適法な訴えであるか否か。具体的には、(1)裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に該当するか、(2)行政事件訴訟法5条に定める「民衆訴訟」として法律上認められたものに該当するか、(3)国会議員について住民訴訟と同様の訴えを認めないことが憲法14条1項に違反するか、が争われた。 【判旨】 裁判所は、本件訴えを不適法として却下した(口頭弁論を経ない却下判決)。 まず、裁判所が審判しうる対象は、法律に特別の定めがある場合を除き、「法律上の争訟」すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られるところ、本件訴えは原告ら自身も客観訴訟であると自認するとおり、原告らの具体的な権利義務に関する紛争ではないから、「法律上の争訟」に該当しないとした。 次に、行政事件訴訟法上の「民衆訴訟」は法律に定める場合に限り提起できるところ、納税者ないし国民の資格に基づき国を相手に違法な公金支出の是正等を求める訴えを民衆訴訟として認める法律上の規定は存在しないと判断した。 さらに、憲法14条1項違反の主張については、全ての住民が地方公共団体に対して住民訴訟を提起できることに加え、国に対してこれらの是正を求める訴えができないことが平等原則に反するとはいえず、住民訴訟のような特別の訴訟制度を国との関係でも設けるか否かは立法政策に委ねられた事項であるとして、原告らの主張を退けた。