AI概要
【事案の概要】 本件は、日本放送協会(NHK)が、政党「NHKから国民を守る党」(被告政党)、その代表者である被告A、副代表の被告B及び協力者の被告Cに対し、「NHK集金人おびき寄せ作戦」と称する活動によって訪問活動業務を妨害されたとして、共同不法行為に基づく損害賠償(無形損害1000万円及び弁護士費用100万円の合計1100万円)を求めた事案である。 被告政党の代表者である被告Aは、令和元年8月、「おびき寄せ作戦」の復活を宣言し、被告Bを隊長に任命してYouTube上で広く協力を呼び掛けた。おびき寄せ作戦とは、NHKの訪問スタッフを自宅等に呼び寄せた上で、承諾なくカメラで撮影し、撮影を拒否しても執拗に追い掛け回し、その様子をYouTubeに投稿するというものであった。 同年9月7日、被告Cがコールセンターに未払受信料の説明を求める電話をかけてNHK職員(本件職員)をおびき寄せ、被告Bが隠れて撮影した上で途中から介入した。本件職員が撮影中止を求めて退出した後も、被告B及び被告Cは駅の改札口まで本件職員を追いかけ、名前を連呼し、「逃げるんだな」「絶対アップロードします」等の発言を浴びせ続けた。その様子は計4本の動画に編集されYouTubeに公開された。 【争点】 (1) 権利侵害の有無及び違法性阻却事由の有無(争点1):被告らは、おびき寄せ作戦はNHKによる犯罪行為の調査や証拠獲得を目的とした活動であり、社会生活上の受忍限度を超えないと主張した。また、仮に権利侵害があっても正当業務行為として違法性が阻却されると主張した。 (2) 損害の発生及びその額(争点2):原告は業務遂行上の無形損害として1000万円及び弁護士費用100万円を主張し、被告らはこれを否認した。 【判旨】 裁判所は、NHKが受信設備設置者に受信契約の締結及び受信料の支払を求めることは放送法64条1項に基づく正当な業務であるとした上で、おびき寄せ作戦は、受信契約締結等の意思がないのに訪問スタッフをおびき寄せ、承諾なく撮影して執拗に追い掛け回し、動画を公開することで訪問活動業務全般に支障を生じさせる業務妨害行為であると認定した。 被告らの犯罪調査目的との主張については、本件職員は未払受信料の支払に関する説明を求められた者であり、犯罪行為の調査目的でないことは明らかで、再三の撮影中止要求にもかかわらず撮影を続行した態様は「見せしめ」と言わざるを得ないとした。また、被告政党が公党であることは正当化要素たり得ないと判示した。 損害については、おびき寄せ作戦以降、訪問先での無断撮影、暴力事案、嫌がらせ電話等が発生し、NHKが複数名での訪問への切替え、講習会実施、警備体制強化等の対応を余儀なくされたことを認定し、無形損害300万円及び弁護士費用30万円の合計330万円の限度で請求を認容した。被告政党については、代表者の職務行為としてなされたものとして、政党法人格法8条・一般法人法78条に基づく損害賠償責任を認めた。