発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「魔王の始め方」と題する小説の著作者である原告が、電気通信事業者である被告(中部テレコミュニケーション株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき発信者情報の開示を求めた事案である。原告の小説を漫画化した二次的著作物「魔王の始め方 THE COMIC」の画像が、ファイル共有ソフト「ビットトレント」を通じて無断で自動公衆送信されたとして、損害賠償請求等の準備のため、被告が管理するIPアドレスの使用者に関する氏名・住所の開示を求めた。被告は特定電気通信役務提供者であることやIPアドレスの管理・発信者情報の保有は争わなかったが、ビットトレントによるダウンロードがアップロード(自動公衆送信)に当たるかは必ずしも明らかでないとして、権利侵害の明白性を争った。 【争点】 ①原告が本件著作物について自動公衆送信権を有するか、②侵害情報の流通により原告の自動公衆送信権が侵害されたことが明らかか、③本件発信者情報が権利侵害に係る発信者情報に当たるか、④発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか、の4点が争われた。特に争点②③について、被告はビットトレントでのダウンロードが当然にアップロードを伴うとは限らないと主張し、原告の権利侵害が明白とはいえないと反論した。 【判旨】 裁判所は、まず争点①について、証拠及び弁論の全趣旨から、原告が本件小説の著作者であり、本件漫画作品がその二次的著作物であることを認め、原告は著作権法28条・23条1項に基づき自動公衆送信権を有すると判断した。争点②③については、ビットトレントの仕様上、電子ファイルをダウンロードした端末は通常当該ファイルのアップロードも行うことになると認定し、原告代理人の調査により被告管理のIPアドレスが割り当てられた端末から本件ファイルの送信が現に行われていた事実を認めた。これにより、本件発信者が送信可能化権及び自動公衆送信権を侵害したことは明らかであり、違法性阻却事由も認められないとした。争点④についても、原告が損害賠償請求等を行う意思を有しており開示を受ける正当な理由があると認め、原告の請求を全部認容した。