過誤納付金還付等請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2行ヒ337
- 事件名
- 過誤納付金還付等請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2021年6月22日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄差戻
- 裁判官
- 宮崎裕子、戸倉三郎、宇賀克也、林道晴、長嶺安政
- 原審裁判所
- 札幌高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 稚内市長は、上告人の市民税及び道民税(市道民税)について、所轄税務署長による所得税の増額更正処分を受けて賦課決定を行い、滞納処分による徴収等を行った。その後、増額更正処分の取消訴訟において処分の一部を取り消す判決が確定したことから、市長は市道民税の税額を減少させる各減額賦課決定を行い、過納金及び還付加算金を上告人に支払った。しかし、上告人は、市長による過納金の額の計算に誤りがあると主張した。具体的には、複数年度分の市道民税を対象とする滞納処分において配当された金銭のうち、減額賦課決定により存在しなかったこととなる年度分に充当されていたものについて、市長はそれを直ちに過納金として扱ったが、上告人は、同じ差押えに係る他の年度分の滞納税に充当されるべきであり、その結果延滞金の額が変わるため、還付すべき過納金の額が過少に算出されていると主張して、不足分の過納金の還付等及び国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。 【争点】 複数年度分の個人住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分において配当された金銭が、減額賦課決定により存在しなかったこととなる年度分の住民税に充当されていた場合、当該金銭は直ちに過納金となるのか、それとも差押えに係る他の年度分の滞納税に法定充当されるべきか。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、札幌高裁に差し戻した。まず、減額賦課決定がされた場合、当初の賦課決定のうち減少した税額に係る部分は賦課決定時に遡って効力を失い、当該部分の個人住民税は当初から存在しなかったこととなるため、存在しなかったこととなる住民税に対する充当は対象債権を欠くものとしてその効力を有しないとした。その上で、複数の地方税を差押えに係る地方税とする滞納処分においては、配当金は滞納分が存在する限り法律上の原因を欠くものではなく滞納分に充当されるべきであり、このことは当初の充当が効力を有しないこととなった配当金についても同様に妥当するとした。仮に当該配当金が直ちに過納金として還付されるとすれば、配当時に滞納分が存在したにもかかわらず滞納状態を解消する効果が生じず、滞納を基礎とする延滞金が発生することになり、滞納処分制度の目的に反すると指摘した。そして、当初の充当が効力を有しないこととなった配当金については、民法489条(改正前)の規定に従った法定充当がされるべきであると判示した。したがって、市長が当該配当金を直ちに過納金として扱い、他の年度分の滞納税に充当しなかった計算には誤りがあるとした。裁判官全員一致の意見である。