AI概要
【事案の概要】 原告(特許権者・株式会社MTG)は、「美容器」に関する特許(特許第5356625号)を保有していた。本件特許は、ハンドルの先端部に一対のボールを回転可能に支持し、ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させた構成等を特徴とする美容器に関するものである。被告(株式会社ファイブスター)は、本件特許について特許無効審判を請求し、特許庁は本件発明がフランス特許出願公開(甲1)に記載された発明等に基づいて当業者が容易に発明できたとして特許を無効とする審決をした。原告がこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。 【争点】 本件発明と甲1発明との相違点1(ボールをハンドルの先端部に支持する構成)、相違点3(ボールの軸線をハンドルの中心線に対して前傾させる構成)、相違点4(ボール外周面間の間隔を10~13mmとする構成)及び相違点5(ボールを非貫通状態で軸受部材を介して支持する構成)の各容易想到性の判断の当否が争われた。特に、甲1発明の「任意の形状の中央ハンドル」に長尺状のハンドルが含まれるか、及び長尺状ハンドルを採用することの動機付け・阻害要因の有無が中心的な争点となった。 【判旨】 請求認容(審決取消し)。裁判所は、甲1には「球,あるいは他のあらゆる任意の形状」との記載はあるものの、まず「球」が念頭に置かれていると理解するのが自然であり、添付図面(FIG.1、FIG.2)もいずれも球状のハンドルが開示されているとしか理解できないと判断した。また、甲1発明はハンドルを傾けて球を進行方向に対して非垂直な軸で回転させて使用するものであるところ、ハンドルを長尺状とし先端部に球を支持する構成にすると、球状ハンドルと比較して傾けられる角度に制約が生じ、操作性に支障が生じかねないとした。さらに、小さい球と大きい球の4個をハンドルに固定する実施例では、長尺状ハンドルを前傾構成にすると一方の球の使用時に他方の球の操作ができなくなるため、長尺状とすることにはむしろ阻害要因があると認定した。以上から、相違点1及び3の容易想到性の判断に誤りがあり、その余の相違点について判断するまでもなく、本件審決は取り消されるべきであると結論付けた。