著作権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 デザイン雑貨の企画・製造・販売を目的とする原告が、被告の販売する壁掛け時計(被告製品)は、原告が著作権を有する時計デザインの原画(本件原画)を複製したものであるとして、著作権(複製権)侵害を主張した事案である。原告は、被告に対し、著作権法112条1項・2項に基づく被告製品の頒布差止め及び廃棄と、民法709条に基づく損害賠償525万3660円及び遅延損害金の支払を求めた。 本件原画は、平成26年2月に原告の発意により作成された壁掛けアナログ時計のデザインであり、黒色の本体に白色の針を配してコントラストを付けた点(本件形態1)と、時計の周囲を円弧状の枠で囲みつつ9時から12時までは枠を設けないデザインを採用し、フォントの大きさと中心部の円の大きさを調整した点(本件形態2)に特徴がある。原告はこの原画に基づき商品化した時計を1個8690円で販売していたが、被告が約6割安い価格で類似製品を販売したため、原告の月平均販売数が32.4個から22.9個に減少したと主張した。 【争点】 主要な争点は、(1)本件原画の著作物性(応用美術が美術の著作物として著作権法上保護されるか)、(2)被告製品が本件原画の複製に当たるか、(3)損害の発生及び損害額であった。 原告は、応用美術も純粋美術としての性質を有する場合には美術の著作物として保護されるべきであり、本件原画には客観的・外形的に創作性があると主張した。これに対し被告は、応用美術のうち著作権法で保護されるのは美術工芸品に限られ、工業製品のデザインは意匠法で保護されるべきものであること、本件原画の各形態はいずれもありふれたものであり、実用面・機能面に基づくものに過ぎないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、応用美術であっても実用目的に必要な構成と分離して美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものは、純粋美術の著作物と客観的に同一なものとして美術の著作物に当たり得るとの判断枠組みを示した。その上で、本件形態1(本体の黒色と針の白色のコントラスト)については、針の視認性を高めるというアナログ時計の実用目的に必要な構成を実現するために採用されたものであり、当該構成と分離して美的鑑賞の対象となる美的特性を備えた部分として把握できないとした。本件形態2(数字の円環配置、円弧状の枠、フォント・円盤の大きさの調整)についても、いずれも時間表示という実用目的に必要な構成であるとした。9時から12時にかけて円弧状の枠が設けられていない部分はデザイン上目を引くものの、2桁の数字(10〜12)の視認性を確保するための実用的考慮に基づくものであり、実用目的に必要な構成と分離して美的特性を備えた部分とは把握できないと判断した。以上から、本件原画は著作物と認められず、著作権に基づく差止請求及び損害賠償請求はいずれも理由がないとして棄却された。