窃盗,道路交通法違反,殺人
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、暴力行為等処罰に関する法律違反の罪で服役後、令和2年5月29日に福島刑務所を満期釈放された。翌日、知人の紹介で解体土木業を営むBの下で働くこととなり、従業員寮に入居したが、新しい人間関係やなじみのない土地、未経験の作業への不安から寝付けず、犯罪をして刑務所に戻りたいと考えるようになった。そして翌31日の早朝までには、寮の駐車場にあった準中型貨物自動車(トラック)を2名くらいに衝突させて逃げようと計画するに至った。 被告人は、同日午前7時30分頃、同トラックを窃取した上、衝突させる歩行者を探して走行中、清掃ボランティアに向かう途中の被害者C(当時55歳)及びD(当時52歳)を発見した。被告人は、両名を行き過ぎてから転回し、時速約60ないし70キロメートルまで加速しながらトラック左前部を両名に衝突させた。Cは胸部大動脈損傷に伴う失血により、Dは多発肋骨骨折等による呼吸不全及び心破裂に伴う出血性ショックにより、いずれも同日中に死亡した。被告人は無免許運転であり、事故後の救護義務・報告義務も怠った。検察官は死刑を求刑し、弁護人は無期懲役を意見とした。 【争点】 殺意の内容が争われた。検察官は、被告人に被害者らを殺害する意欲(確定的殺意)があったと主張したのに対し、弁護人は、被害者らが死んでも構わないという未必の故意にとどまると主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人が重量約2500キログラムのトラックを時速約60ないし70キロメートルまで加速させ、ガードレール脇で逃げ場のない被害者らの正面からトラック前部を衝突させた行為は、被害者らをほぼ確実に死亡させる危険性があったと認定した。被告人は運転免許取得歴がありスピードメーターを確認するなど的確な運転操作をしていたことから、その危険性を認識できなかったとは考え難いとし、被害者らを死亡させる蓋然性が高いことを認識しながら意図的に衝突させたと認定した。もっとも、殺害の意欲まであったとする検察官の主張については、逮捕直後の供述に殺意を明確に述べた部分がなく、検察官段階の供述も公判で誘導的質問によるものと述べていることから採用しなかった。 量刑判断においては、死刑求刑事例の傾向を踏まえ、罪質が極めて悪質で動機も身勝手かつ自己中心的であること、犯行態様の残虐さと犯行遂行意思の強固さを重視した。被告人が事実を認め遺族に謝罪していること、10万円の被害弁償をしていることなどを最大限考慮してもなお、罪刑の均衡及び一般予防の見地から死刑を選択することが真にやむを得ないとし、被告人を死刑に処した。