AI概要
【事案の概要】 亡Dが被告会社(暖房設備工事業)を退職した後に自殺したことにつき、亡Dの妻である原告A及び子である原告B・原告Cが、亡Dは被告会社での過重な業務によりうつ病を発症して自殺したものであると主張し、被告会社及びその代表取締役である被告Eに対し、民法709条等に基づき、連帯して損害賠償金(原告Aにつき約5286万円、原告B・Cにつき各約2643万円)及び遅延損害金の支払を求めた事案である。亡Dは平成24年8月に被告会社に再就職し、新築住宅の暖房設備工事に従事していたが、同年12月22日に上司との口論の末に職場放棄をして退職し、翌年4月13日に自殺した。札幌中央労働基準監督署は業務起因性を認めて労災保険の支給決定をしていた。 【争点】 (1)長時間労働の有無、(2)上司とのトラブル等の有無、(3)亡Dのうつ病又は適応障害の発症の有無、(4)業務と自殺との因果関係、(5)被告らの責任の有無、(6)過失相殺の可否、(7)損害額。被告らは、待機時間や移動時間を考慮すれば時間外労働は短時間にとどまること、亡Dの健康悪化の徴候について予見可能性がなかったこと、経済的困窮や家庭内不和等の業務外要因が自殺に寄与したことなどを主張した。 【判旨】 裁判所は、始業時刻を朝礼開始の午前7時50分と認定し、被告らが主張する待機時間や移動時間の休憩時間への算入を否定した上で、亡Dの時間外労働時間を認定した。その結果、平成24年9月22日から12月20日までの3か月間、継続して月100時間以上の時間外労働が行われていたと認定した。亡Dの家族の供述等から、同年11月頃からの疲労の訴え、不眠傾向、身なりの無頓着、食欲不振、趣味への関心喪失、飲酒量の増加等の症状を認め、遅くとも同年12月中旬にはICD-10診断ガイドラインにおけるうつ病を発症していたと認定した。業務外の心理的負荷要因(経済的困窮、家庭内不和等)については、いずれも認定できないとし、被告会社の業務とうつ病発症及び自殺との因果関係を肯定した。被告会社は36協定未締結のまま月106時間の固定残業代を設定して労働者を時間外労働に従事させ、日報で労働時間を把握しながら集計・是正措置を講じなかったことから注意義務違反を認め、代表取締役の被告Eについても同様に責任を認めた。過失相殺は否定した。損害額として、慰謝料2800万円、逸失利益約4340万円(基礎収入に月45時間分の未払時間外手当を年5か月分算入)等を認め、労災保険金を控除した上で、原告Aに約1563万円、原告B・Cに各約1974万円の連帯支払を命じた。