AI概要
【事案の概要】 被告(ビーエーエスエフ アーエス)が有する特許第6026672号(発明の名称「油組成物からの好ましくない成分の除去」)に対し、原告(日本水産株式会社)が無効審判請求をしたところ、特許庁は請求項18・19に係る部分のみ無効とし、請求項1ないし17に係る審判請求は成り立たないとする審決をした。本件は、原告が同審決のうち請求項1ないし17に係る部分の取消しを求めた審決取消訴訟である。本件各発明は、海産物油等の原油組成物から臭素化難燃剤等の好ましくない親油性成分やタンパク質性化合物等の親水性成分を除去する方法に関し、水性流体処理ステップ(ステップ(b))で遊離脂肪酸を部分中和した後、内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理(ステップ(c))を行い、さらに多不飽和脂肪酸を濃縮する処理(ステップ(d))を行うことを特徴とする。原告は、明確性要件違反、実施可能要件違反、サポート要件違反、及び先行技術(甲2ないし甲4文献)に基づく進歩性欠如を主張した。 【争点】 (1) 明確性要件違反(「臭素化難燃剤」「外部揮発性作業流体」の明確性)、(2) 実施可能要件違反(臭素化難燃剤のストリッピング除去が実施可能か)、(3) サポート要件違反、(4) 甲2発明(特表2005-532460号)に対する進歩性の有無(相違点4-2及び10-2)、(5) 甲3発明(特開昭62-145099号)に対する進歩性の有無(相違点4-3及び10-3)、(6) 甲4発明(国際公開第2012/002210号)に対する進歩性の有無(相違点4-4及び10-4) 【判旨】 知財高裁は、取消事由(1)ないし(3)についてはいずれも理由がないとした。「臭素化難燃剤」は本件明細書の記載や技術常識から、少なくとも高分子量で揮発性が極めて低いものは含まれないと当業者が認識でき、不明確とはいえない。実施可能要件・サポート要件についても、明細書の記載は当業者が過度の試行錯誤なく実施できる程度に十分であるとした。進歩性判断については、請求項1ないし6、8、9及び11ないし17に係る発明(ステップ(b)で塩基による部分中和を行う構成)は、甲2ないし甲4のいずれの発明からも容易想到とはいえないとして審決の判断を維持した。他方、請求項7及び10に係る発明(ステップ(b)で実質的に塩基なしで水性流体と接触させ、無機塩を解乳化剤として用いる構成)については、水や水蒸気を用いた脱ガム処理が周知技術であり、相分離改善のための無機塩添加も一般に知られていたことから、甲2ないし甲4の各発明に基づき当業者が容易に想到し得たとして進歩性を否定し、審決を取り消した。以上より、請求項7及び10に係る部分の審決を取り消し、その余の請求を棄却した。