AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(高砂工業株式会社)が、被告ら(株式会社IHI及び株式会社IHI機械システム)が有する「真空洗浄装置および真空洗浄方法」に関する特許(特許第6043888号、請求項1〜5)について、特許庁に無効審判を請求したところ、特許庁が「本件審判の請求は成り立たない」との審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、真空ポンプで減圧された洗浄室で石油系溶剤の蒸気によりワークを洗浄した後、事前に減圧・低温保持された凝縮室と開閉バルブで連通させることでワークを乾燥させる装置及び方法に関するものである。原告は、進歩性欠如(無効理由1・2)、分割要件違反(無効理由3)、実施可能要件違反(無効理由4)、サポート要件違反(無効理由5)の5つの無効理由を主張した。 【争点】 主な争点は、(1)甲10(先行技術文献)を主引用例とする進歩性判断における相違点1-2の認定の当否(凝縮室の事前減圧の要否)、(2)甲18を主引用例とする進歩性判断における相違点2-2等の認定の当否、(3)相違点に係る構成の容易想到性、(4)分割要件の充足性、(5)実施可能要件の充足性、(6)サポート要件の充足性である。特に中心的争点は、本件特許発明が凝縮室を開閉バルブの連通前に事前に減圧しておく構成に限定されるか否かであった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、本件審決の判断に誤りはないとして、全ての取消事由を排斥した。相違点の認定について、請求項1の構成要件D(「減圧の状態が保持される凝縮室」)、E(温度保持手段)、G(乾燥手順)の文言を総合的に解釈し、本件特許発明は、ワークの洗浄終了前に凝縮室が真空ポンプにより減圧されて減圧状態が保持され、かつ洗浄室より低温に保持された上で、洗浄終了後に開閉バルブで洗浄室と連通させて乾燥する構成であると認定した。原告が主張する「凝縮室の減圧タイミングは文言上限定されていない」との解釈は、「保持される」「保持する」「保持された」という文言の使用を考慮しないものであり、採用できないとした。進歩性については、相違点に係る構成は甲11〜17や甲49〜53のいずれにも開示されておらず、容易想到とはいえないと判断した。分割要件、実施可能要件、サポート要件についても、いずれも充足すると認めた。