AI概要
【事案の概要】 原告(高砂工業株式会社)は、被告ら(株式会社IHI及び株式会社IHI機械システム)が特許権者である「真空洗浄装置および真空洗浄方法」に係る特許(特許第5976858号、請求項1〜5)について、特許庁に無効審判を請求した。原告は、(1)甲10を主引例とする進歩性欠如、(2)甲19を主引例とする進歩性欠如、(3)分割要件違反による新規性・進歩性欠如、(4)実施可能要件違反、(5)サポート要件違反の5つの無効理由を主張したが、特許庁は「審判の請求は成り立たない」との審決をした。原告はこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴した。本件特許発明は、石油系溶剤の蒸気でワークを洗浄した後、事前に洗浄室とは独立して減圧・低温保持された凝縮室と洗浄室を連通させることにより、乾燥時間を短縮する真空洗浄装置に関するものである。 【争点】 主な争点は、(1)本件特許発明の構成要件D「洗浄室とは独立して減圧され、当該減圧の状態が保持される凝縮室」の解釈として、凝縮室の減圧は開閉バルブによる連通前に事前に行われている必要があるか否か(相違点1-2等の認定の当否)、(2)甲14や甲56等に基づく容易想到性の有無、(3)分割出願における新規事項追加の有無、(4)実施可能要件の充足性、(5)サポート要件の充足性である。特に中心的争点は、特許請求の範囲の文言解釈として、凝縮室の減圧タイミングが限定されているか否かであった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。まず進歩性について、構成要件Dの「保持される」、構成要件Eの「前記凝縮室」、構成要件Gの「低い温度に保持された前記凝縮室」の文言を総合的に解釈し、本件特許発明は、ワークの洗浄が終わる前に凝縮室が洗浄室とは独立して減圧され減圧状態が保持されていることを要するものと認定した。原告が主張する「凝縮室の減圧タイミングは文言上限定されていない」との解釈は、「保持される」「保持する」「保持された」という文言を考慮しないものであり採用できないとした。また「独立して」の意味について、洗浄室から束縛又は支配されない状態で減圧されること、すなわち洗浄室とは関係なく減圧されることを意味すると判断し、第2実施形態は本件特許発明1の実施形態とは認められないとした。その上で、相違点に係る構成は先行文献のいずれにも開示されておらず容易想到性は認められないとした。分割要件、実施可能要件、サポート要件についても審決の判断に誤りはないとして、全ての取消事由を排斥した。