AI概要
【事案の概要】 宮崎県に所在する航空自衛隊新田原飛行場の周辺に居住する住民である原告ら(約170名)が、同飛行場で運航される自衛隊機が発する騒音等により、睡眠妨害等の身体的被害や精神的苦痛を被っているとして、国家賠償法2条1項に基づき、被告(国)に対し、過去の損害賠償及び将来の損害賠償を求めた事案である。原告らは、WECPNL(加重等価継続感覚騒音レベル、いわゆるW値)75以上の騒音に暴露されていると主張し、慰謝料として月額3万5000円及び弁護士費用3500円の支払等を請求した。 【争点】 (1) 損害賠償請求の法律上の根拠及び判断枠組み、(2) 侵害行為の態様と侵害の程度(航空機騒音の評価方法として環境庁方式と施設庁方式のいずれが相当か等)、(3) 被侵害利益の内容と性質(睡眠妨害、生活妨害、心理的被害等)、(4) 侵害行為の持つ公共性や公益上の必要性、(5) 被害防止措置(住宅防音工事等)の効果、(6) 受忍限度を超える違法性の有無、(7) 損害賠償額、(8) 将来の損害賠償請求の可否。 【判旨】 裁判所は、大阪空港最高裁判決の判断枠組みに従い、侵害行為の態様・程度、被侵害利益の性質・内容、公共性、被害防止措置等を総合考慮して受忍限度を判断した。航空機騒音の評価方法については、軍用飛行場の特性を踏まえた施設庁方式が相当であるとした。75Wの騒音コンター内に居住する原告らについて、年間75W以上の航空機騒音に暴露され、種々の生活妨害や心理的被害、一定の睡眠妨害を受けていると認定した。本件飛行場には安全保障政策上の公共性が認められるものの、その利益は国民が等しく享受する一方、航空機騒音の不利益は周辺住民のみが被っており看過し難い不公平が存在すること、住宅防音工事は被害の根本的解消を実現するものではないこと等から、社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害があると認め、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償責任を肯定した。慰謝料は月額でW値に応じ75W地域4000円、80W地域8000円、85W地域1万2000円、90W地域1万6000円、95W地域2万円と認定し、住宅防音工事済みの場合は施工室数に応じ10~30%減額した。一方、75Wコンター外の原告ら6名については受忍限度内として請求を棄却した。将来の損害賠償請求については、損害賠償請求権の成否・額を一義的に認定できないとして不適法却下とした。