AI概要
【事案の概要】 本件は、特許無効審決の取消訴訟である。原告は、「逆流性食道炎の再発抑制剤」に関する特許(特許第6283440号)を有していたところ、被告沢井製薬らが無効審判を請求した。特許庁は、本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする審決をしたため、原告がその取消しを求めた。本件発明は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法として、ラベプラゾールナトリウム10mgを1日2回、4週間以上投与することを特徴とする再発抑制剤に関するものである。 【争点】 主たる争点は、本件発明の進歩性の有無である。具体的には、引用発明(甲1:ClinicalTrials.govに公開された第III相臨床試験計画、甲2:日本医薬情報センターの臨床試験情報)及び本件優先日当時の技術常識に基づいて、当業者が本件発明を容易に発明できたか否かが争われた。原告は、PPI抵抗性逆流性食道炎患者の維持療法における用法・用量は優先日当時不明であり、本件発明の再発抑制効果は当業者の予測を超える顕著なものであると主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、本件優先日当時の技術常識として、(1)ラベプラゾールナトリウムは治療期・維持療法期のいずれにおいても酸分泌抑制作用により効果をもたらすこと、(2)胃酸分泌の抑制効果はPPIの投与量や投与回数と正の相関関係にあること、(3)胃酸分泌抑制作用の強さは維持療法における再発率とも関連していると考えられていたこと、(4)PPI抵抗性逆流性食道炎患者の治療期において10mg1日2回投与の優越性が認められていたことを認定した。これらを踏まえ、当業者がPPI抵抗性逆流性食道炎患者の維持療法期に「1回10mgを1日2回」という用法・用量を設定することは容易に想到できたと判断した。本件発明の再発抑制効果についても、当業者が予測し得た範囲を超える顕著な効果とは認められないとして、本件審決の判断に誤りはないと結論付けた。