地方自治法251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3行ヒ76
- 事件名
- 地方自治法251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2021年7月6日
- 裁判種別・結果
- 判決・棄却
- 裁判官
- 林道晴、戸倉三郎、宮崎裕子、宇賀克也、長嶺安政
- 原審裁判所
- 福岡高等裁判所_那覇支部
AI概要
【事案の概要】 沖縄防衛局は、普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置するための埋立事業に関し、埋立区域内に生息する造礁サンゴ類約3万9590群体を区域外に移植するため、沖縄県漁業調整規則に基づく特別採捕許可を沖縄県知事(上告人)に申請した。しかし、上告人は標準処理期間(45日)を経過しても何らの処分もしなかった。これを受けて農林水産大臣(被上告人)は、許可処分をしない沖縄県の法定受託事務の処理が法令に違反するとして、地方自治法245条の7第1項に基づき、許可処分をするよう是正の指示を行った。上告人は、この是正の指示が違法な国の関与に当たるとして、同法251条の5第1項に基づきその取消しを求めた。背景として、埋立承認後に大浦湾側の大半の水域で軟弱地盤が判明し、当初の設計概要にない地盤改良工事が必要となったが、是正指示の時点では設計変更の承認申請すらなされていなかった。 【争点】 沖縄県知事が特別採捕許可をしないことが裁量権の逸脱・濫用に当たり、漁業法65条2項1号等に違反するか。具体的には、埋立事業の設計変更承認が未申請の段階で、サンゴ移植の必要性を認めることができないとした知事の判断が、裁量権の範囲内といえるかが問題となった。 【判旨】 最高裁は、上告を棄却し、是正の指示は適法であると判断した。まず、漁業法65条2項1号等に基づく都道府県規則の違反は、同時に漁業法65条2項1号等の違反にもなり得るとし、是正指示の対象となることを確認した。次に、特別採捕許可に関する知事の裁量判断は、判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、重要な事実の基礎を欠く場合又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に裁量権の逸脱・濫用となるとした。そのうえで、軟弱地盤に関する設計変更承認が未了であっても、変更に関する部分に含まれない範囲の護岸造成工事については、沖縄防衛局は当初の埋立承認に基づき適法に実施し得る地位を有していたと認定。サンゴ類は当該護岸工事の予定箇所に生息しており、工事により死滅するおそれがあった以上、水産資源の保護培養という漁業法等の目的からは移植の必要性が認められるとした。知事の判断は、当然考慮すべき事項を十分に考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮した結果、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであり、裁量権の逸脱・濫用に当たると結論づけた。 【反対意見】 宇賀克也裁判官と宮崎裕子裁判官は反対意見を述べた。宇賀裁判官は、大浦湾側の大半に軟弱地盤が存在し設計変更承認が未申請である以上、埋立事業全体の実現可能性が不確定であり、変更承認の蓋然性は特別採捕許可の要考慮事項であると指摘した。サンゴの移植は大半が死滅する不可逆的行為であるから、護岸工事のみに着目して判断することは「木を見て森を見ず」であり、知事が許可しなかったことに裁量権の逸脱・濫用はないとした。宮崎裁判官も全面的に同調し、埋立て自体が不確定となった以上、当初の承認における環境保全適合性の判断は実質的に無意味となっており、変更承認の蓋然性を考慮すべきであると補足した。