AI概要
【事案の概要】 フリーランスのジャーナリストである原告は、元TBSテレビ・ワシントン支局長から性被害を受けたと主張し、実名・顔出しで記者会見を開くなど社会に発信していた。原告が、自身を誹謗中傷する漫画家らに対して名誉毀損訴訟を提起したところ、東京大学大学院の元特任准教授で約1万8000人のフォロワーを持つ被告が、ツイッター上で原告の訴訟提起を批判する複数のツイートを投稿した。さらに被告は、「Cって偽名じゃねーか!」という文章に「#性行為強要」等のハッシュタグを付し、原告とは別人の破産手続開始決定に関する官報公告画像を添付したツイート(本件ツイート)を投稿した。原告は、本件ツイートにより名誉を毀損されたとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)及び本件ツイートの削除を求めた。 【争点】 主な争点は、①本件ツイートにより摘示された事実の内容及び原告の社会的評価の低下の有無、②損害額、③ツイートの削除請求の可否であった。被告は、「C」という名前はツイッター上に多数存在し、原告と破産者が別人であることはネット上で広く認識されていたから、一般読者は本件ツイートが原告に言及したものとは認識せず、社会的評価は低下しないと主張した。また、本件ツイートに対するリプライの中に両者が別人であることを指摘するものがあることも根拠として挙げた。 【判旨】 裁判所は、原告が実名を明らかにして性被害を訴えている人物であること、「#性行為強要」のハッシュタグが性被害に関する文脈で用いられていること、被告が先行ツイートで繰り返し原告を名指しで言及していたこと等から、一般読者の普通の注意と読み方を基準にすれば、本件ツイートが原告を名指しするものであることは明らかであると判断した。さらに、原告と破産者が別人であることが社会的に広く認識されていたとは認められず、むしろ「#D」のハッシュタグ検索結果の大半が原告に言及するツイートであることから、読者が両者を誤認・結び付けて認識していることが裏付けられるとした。本件ツイートは原告が破産手続開始決定を受けたかのような印象を与え、社会的評価を低下させると認定した。損害額については、通名を「偽名」と誇張し官報画像を添付して読者の誤認を殊更誘引する悪質な態様であること、名指しでなければ名誉毀損にならないとする被告の持論に基づき巧妙に体裁を整えた身勝手な動機がうかがわれること、提訴後も攻撃的姿勢を軟化させていないこと等を考慮し、慰謝料30万円及び弁護士費用3万円の合計33万円を認容した。併せて、本件ツイートの削除も命じた。