AI概要
【事案の概要】 米国の州立大学(カリフォルニア大学)である原告は、特許協力条約(PCT)に基づき国際特許出願を行い、日本への国内移行手続を日本の弁理士に委任した。担当弁理士は事務担当補助者に国内書面の作成を指示し、技術担当補助者に国内移行手続の担当を指示したが、これは通常の業務の進め方と異なるものであった。事務担当補助者が作成した未提出の国内書面を技術担当補助者に渡したところ、技術担当補助者はこれを提出済みの書面と誤認し、机の引出しに収納したまま放置した。その結果、特許法184条の4第1項が定める優先日から2年6か月の国内書面提出期間が徒過し、本件国際特許出願は取り下げられたものとみなされた。原告は期間徒過後に国内書面を提出し、期間徒過には「正当な理由」がある旨の回復理由書を提出したが、特許庁長官は「正当な理由」を認めず手続を却下する処分をした。原告の審査請求も棄却されたため、原告は本件処分及び本件裁決の各取消しを求めて提訴した。 【争点】 1. 本件処分の取消事由の有無(特許法184条の4第4項の「正当な理由」の有無) 2. 本件裁決の取消事由の有無(理由付記不備・審理不尽の違法の有無) 原告は、技術担当補助者の誤認は単独の人為的過誤であり、担当弁理士は多忙により適応障害を発症していた可能性が高く期限管理システムの確認ができなかったと主張した。また、特許庁のガイドラインが特許法条約の趣旨に反し違法であること、特許庁が証拠提出を促さなかった手続保障の欠如も主張した。 【判旨】 裁判所は原告の請求をいずれも棄却した。まず「正当な理由」の意義について、出願人(代理人を含む)として相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的に期間内に翻訳文を提出できなかった場合をいうと解した。技術担当補助者については、事務担当補助者から受け取った書面を十分に確認せず提出済みと誤認したことは基本的かつ初歩的な業務の懈怠であるとした。担当弁理士については、業務に従事して2か月の技術担当補助者に通常と異なる方法で指示しながら必要な注意喚起を怠り、容易にできたはずの提出期限の進捗確認も行わなかったとして、相当な注意を尽くしたとは認められないと判断した。担当弁理士の多忙による適応障害の主張についても、これを裏付ける証拠が不十分であり、期限管理システムへのアクセスは労力・時間をそれほど要するものではないとして退けた。ガイドラインの違法性の主張に対しては、ガイドラインは法規範性のある行政規則ではないとし、手続保障の欠如の主張に対しても、却下理由通知書の送付及び弁明の機会の付与がなされており不意打ちとはいえないとした。裁決の取消事由についても、原処分が適法である以上、理由付記不備の違法は取消事由とならないとして棄却した。