AI概要
【事案の概要】 労働組合である申立人は、大阪府立労働センター(エル・おおさか)のギャラリーを利用して「表現の不自由展かんさい」を開催するため、令和3年3月に利用承認を受けた。同展は、令和元年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で激しい抗議を受けて一時中止となった企画展「表現の不自由展・その後」の巡回展の一環であり、東京・名古屋・大阪での開催が予定されていた。しかし、東京展は抗議活動により延期され、名古屋展は会場に届いた不審な郵便物の破裂により中止となった。こうした状況を受け、指定管理者である相手方は、令和3年6月25日、本件センターへの抗議電話・メールや街宣車による街宣活動等を理由に、施設の「管理上支障がある」として利用承認の取消処分を行った。申立人は、同取消処分及び会議室の利用不承認処分の取消しの訴えを提起するとともに、執行停止を申し立てた。 【争点】 主な争点は、(1)利用不承認処分の効力停止を求める部分の適法性、(2)「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」(行政事件訴訟法25条2項)といえるか、(3)「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」に当たるか、(4)「本案について理由がないとみえるとき」に当たるかである。特に(4)に関しては、本件催物に反対する者の抗議活動を理由とする利用承認取消しが、公の施設の利用関係における集会の自由・表現の自由の制約として許容されるかが核心的な論点となった。 【判旨】 大阪地裁は、ギャラリーの利用承認取消処分の効力を第1審判決言渡しまで停止する決定をした。まず、会議室の利用不承認処分については、仮の利用申込みに対する通知にすぎず処分が存在しないとして却下した。利用承認取消処分については、開催予定日の3週間前という時期に取り消されたこと、代替会場の確保が事実上不可能であること、展示会を開催できない不利益は金銭賠償で回復困難であることから、「重大な損害を避けるため緊急の必要がある」と認めた。本案の理由の有無については、公の施設の利用を広く認める地方自治法244条の趣旨に照らし、利用承認の取消事由である「管理上支障があると認められるとき」とは、客観的事実に照らして具体的に明らかに予測される場合をいうとした上で、催物自体は平穏に開催しようとするものであり、反対者の抗議活動を理由に利用を拒み得るのは、警察の適切な警備等によってもなお混乱を防止できない特別な事情がある場合に限られるとの判断枠組みを示した。そして、実際の抗議活動は反対意見の表明にとどまり、警察等の適切な対応で防止・回避できないほどの具体的危険性があるとはいえないこと、相手方は利用承認時に催物の性質を認識し得たにもかかわらず承認しており取消しに至った合理的理由が明らかでないことを指摘し、「本案について理由がないとみえるとき」には当たらないと判断した。