南相馬避難解除取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 平成23年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所事故に関し、福島県南相馬市の142地点152世帯について「特定避難勧奨地点」の設定がなされた。特定避難勧奨地点とは、事故後1年間の積算線量が年間20mSvを超えると推定される地点等について、住民への注意喚起と避難支援を行う制度である。設定を受けた住民には、国民健康保険の一部負担金免除、国民年金保険料免除、介護保険利用者負担免除、NHK放送受信料免除等の各種支援措置が講じられた。 原子力災害現地対策本部は、平成26年の環境放射線モニタリング調査で全地点の年間積算線量が20mSvを下回ることが確実であると確認されたことを受け、同年12月28日に設定を解除した。これに対し、設定を受けた住居の住民366名(指定原告)と周辺住民442名(非指定原告)の計808名が、解除の取消し、特定避難勧奨地点に設定されている地位の確認、及び国家賠償法1条1項に基づく各10万円の損害賠償を求めて提訴した。 【争点】 (1) 特定避難勧奨地点の設定解除に行政処分としての処分性が認められるか (2) 特定避難勧奨地点に設定されている地位の確認の利益があるか (3) 設定解除について国家賠償法1条1項の違法性が認められるか。具体的には、追加被ばく線量を年間1mSv以下にする法的義務違反、放射性物質の表面密度限界の考慮義務違反、ICRP勧告の放射線防護原則違反等の有無 【判旨】 取消訴訟及び確認訴訟をいずれも却下し、国家賠償請求をいずれも棄却した。 (1) 処分性について、裁判所は、特定避難勧奨地点の設定は、警戒区域や計画的避難区域の設定とは異なり、原災法上の根拠規定に基づくものではなく、原災本部の対応方針に基づき現地対策本部が事実上実施したものにすぎないと認定した。設定の内容は、住民への情報提供と避難の検討を促し、避難する場合の支援を表明する措置であって、避難を強制するものではないとした。各種支援措置も、設定によって直接法律上の地位が付与されたものではなく、各関係機関の個別の判断で事後的に実施されたものであるとして、設定解除に処分性を認めなかった。 (2) 確認の利益について、特定避難勧奨地点の設定は住民の権利又は法律関係に直ちに影響を及ぼすものではなく、確認の訴えは事実の確認を求めるものにすぎないとして、確認の利益を否定した。 (3) 国家賠償法の違法性について、設定解除は情報提供にすぎず帰還を強制するものではないことから、原告らの権利ないし法益の侵害は認められないとした。さらに、ICRP勧告が直ちに国に法的義務を課すものではないこと、規制法や放射線障害防止法の線量限度は計画的被ばく状況を前提とした平時の規制であり、緊急時・現存被ばく状況には当てはまらないことから、追加被ばく線量を年間1mSv以下にする法的義務も認められないとして、違法性を否定した。