発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、ツイッター(Twitter)上で医師である原告に対するなりすましアカウントが開設され、原告のイラスト画像を無断使用した上で誹謗中傷の投稿が繰り返されたことについて、原告がプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、経由プロバイダである被告(NTTコミュニケーションズ)に対して発信者情報の開示を求めた事案である。投稿者は「尻穴まで洗う救急医Baka」というアカウント名で、原告のアカウント名をもじったなりすましアカウントを開設し、原告のプロフィール用イラスト画像を設定した上で、令和2年12月から令和3年1月にかけて、原告を侮辱する卑猥な表現や、原告になりすまして科学的根拠のない医療情報を発信する内容の投稿を計6回行った。原告はツイッター社から仮処分決定に基づきログイン時のIPアドレス等の開示を受けたが、これは投稿時のIPアドレスではなくログイン時のものであったため、この情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するかが問題となった。 【争点】 主な争点は、(1)ログイン時のIPアドレスから把握される発信者情報がプロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるか、(2)被告が「開示関係役務提供者」に当たるか、(3)著作権(複製権・公衆送信権)侵害及び名誉感情侵害の明白性、(4)開示を受けるべき正当な理由の有無である。被告は、ログイン情報は投稿そのものの通信ではなく「権利の侵害に係る発信者情報」には当たらないと主張し、また一部のログインがフリーWiFi回線経由である可能性を指摘してアカウント共有の可能性を主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。争点(1)について、プロバイダ責任制限法4条1項は「権利の侵害に係る発信者情報」と規定しており、侵害情報発信時のIPアドレスに限定していないことから、権利侵害との結びつきがあり権利侵害者の特定に資する通信から把握される発信者情報を含むと解するのが相当であるとした。また、ツイッター社が投稿時のIPアドレスを保存しておらず、ログイン情報も直近2か月分しか保存していない実態を踏まえ、サイト運営者のログ保存方法により被害者の権利救済の可否が左右されることは同法の想定するところではないと指摘した。ログイン者と投稿者の同一性については、ツイッターはアカウント・パスワード入力によるログインが必要なサービスであること、本件アカウントが特定個人により継続的に使用されていたこと、意見照会後に投稿が停止したこと等から同一性を認定した。著作権侵害及び名誉感情侵害の明白性もいずれも認め、フリーWiFi回線経由の主張については客観的裏付けがないとして排斥した。