AI概要
【事案の概要】 本件は、「核酸分解処理装置」に関する特許(特許第5463378号)について、原告(株式会社ウィングターフ)が請求した特許無効審判の不成立審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。被告(株式会社シーライブ)は、メタノールから触媒反応により発生するラジカル性ガス(MRガス・バイオガス)を用いて核酸を分解する装置の特許権者である。 原告は先に無効審判を請求し、一次審決で請求不成立とされたが、知財高裁の一次判決でこれが取り消された。差戻し後の審判手続において、被告は請求項2に「暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする」との限定を加える訂正を行い、特許庁は再び請求不成立の審決(本件審決)をした。原告はこの審決のうち請求項2ないし4に係る部分の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 【争点】 主な争点は、(1)甲1(先行特許公報)を主引用例とする訂正発明2の進歩性の有無(取消事由1-1)、(2)訂正発明3及び4の進歩性の有無(取消事由1-2)、(3)サポート要件違反の有無(取消事由2)、(4)実施可能要件違反の有無(取消事由3)である。特に中心的な争点は、甲1発明に甲2(ホルムアルデヒドガス殺菌装置に関する先行文献)のフィードバック制御の構成を組み合わせた上で、庫内差圧を「陰圧で」一定にすることが当業者にとって容易想到であったか否かであった。本件審決は、甲2には陰圧制御が開示されておらず、陽圧から陰圧への変更は容易想到でないと判断していた。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を認容し、本件審決を取り消した。 まず、一次判決の拘束力について、審決取消判決が確定した場合、再度の審理・審決には行政事件訴訟法33条1項の拘束力が及ぶことを確認した上で、甲2に庫内差圧を検出しフィードバック制御により被殺菌空間の圧力を一定に維持する構成が開示されていることを前提とすべきとした。 次に、甲2の特許請求の範囲には室圧を陽圧で制御するとの限定がなく、陽圧での制御はあくまで実施形態の一つにすぎないと認定した。その上で、人体に有害な物質が室内に存在する場合に室内を陰圧に制御することは周知技術であり、ホルムアルデヒドガスを陰圧下で使用することも技術常識であったと認定し、甲1発明に甲2の構成を適用する際に周知技術・技術常識を参酌して陰圧制御とすることは容易想到であると判断した。被告の阻害要因の主張についても、甲2の陽圧制御の記載は実施形態の一つにすぎず、阻害要因は認められないとした。 訂正発明3及び4についても、訂正発明2の容易想到性が認められる以上、同じ理由で審決の判断は誤りであるとした。