AI概要
【事案の概要】 原告(東日本旅客鉄道株式会社)は、感電事故防止に関する社内教育用DVD動画(原告動画)の著作権を有していた。原告動画は、平成20年に原告がジェイアール東日本企画(JEKI)に制作を依頼し、JEKIがトウキョウビジュアルコミュニケーション山本(TVC)に再委託して制作されたものであり、著作権はTVC→JEKI→原告と順次譲渡された。令和2年5月、原告の従業員が、動画共有サイト「niconico」上に原告動画と同一の動画(本件投稿動画)が氏名不詳者により無断で投稿されていることを発見した。原告はドワンゴに削除申請を行い、動画は削除された。原告は、投稿者に対する損害賠償請求のため、経由プロバイダである被告(ソフトバンク株式会社)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、投稿者の氏名・住所・電子メールアドレスの開示を求めて提訴した。 【争点】 ①著作権侵害の明白性(原告動画の著作物性、著作権の帰属、投稿動画との同一性、違法性阻却事由の不存在)、②発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無。被告は、原告動画の著作権帰属や投稿動画との同一性が証拠上明らかでないこと、著作権法30条以下の権利制限事由が存在しないとはいえないことを主張した。また、氏名・住所の開示で損害賠償請求は可能であるから、電子メールアドレスの開示を受ける正当理由はないと争った。 【判旨】 裁判所は、原告動画について、感電事故防止の知識をまとめた研修用動画として、テーマに沿った説明・図示・アングル等の工夫により著作者の思想等を創作的に表現したものであり、著作物に該当すると認定した。著作権の帰属については、TVCの職務著作として制作された後、対価支払を経てTVCからJEKIへ、さらにJEKIから原告へと順次譲渡されたことを認め、原告に著作権が帰属すると判断した。投稿動画との同一性については、原告従業員が視聴して同一であることを確認したこと、ドワンゴも内容確認の上で削除に応じたことから、同一性を認定した。違法性阻却事由については、著作権を制限する事由の存在をうかがわせる証拠はないとして排斥した。正当理由については、損害賠償請求権の行使に発信者情報の開示が必要であるとし、電子メールアドレスについても、転居等により被告が保有する住所と実際の住所が異なる可能性があることから、開示が不要とはいえないと判断した。以上から、原告の請求を全部認容した。