通知(処分)撤回及び損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 土岐市図書館を日常的に利用していた原告が、図書館の蔵書管理方法への執拗な介入・指示、書庫出納票の大量発行、カウンターでの図書等の放置、1日に100冊以上に及ぶ過剰な図書の借出しと返却の繰り返し、大型本の返却ポストへの投入などを繰り返した。土岐市教育委員会は、通知書による注意・警告を2度にわたり行ったが改善されなかったため、令和元年11月18日付けで、土岐市図書館運営規則6条に基づき、全面的かつ無期限の図書館利用及び入館禁止処分を行った。原告は、同処分の取消しを求めるとともに、処分等による差別的取扱い及び公文書開示請求書の紛失を理由に、国家賠償法1条1項又は民法709条に基づき慰謝料40万円の損害賠償を請求した。 【争点】 (1) 本件利用禁止処分の適法性。特に、条例に利用禁止規定がない中、教育委員会規則のみを根拠として全面的かつ無期限の利用禁止処分をすることが法令上許容されるか。 (2) 本件処分に至るまでの館長の指示及び図書館職員の対応の国家賠償法上の違法性の有無。 (3) 被告職員が公文書開示請求書を紛失したか否か。 【判旨】 裁判所は、本件処分を違法として取り消し、慰謝料5000円の限度で損害賠償請求を認容した。 まず、公立図書館の利用者が自由に様々な意見・知識・情報に接する自由は、憲法19条・21条の趣旨から派生原理として保障されるべきものであるとした上で、公の施設である図書館は原則として誰でも無償で利用でき(地方自治法244条2項、図書館法17条)、住民の権利を制限するには条例によらなければならない(地方自治法14条2項)と指摘した。そして、本件条例には利用禁止に関する規定が存在せず、本件規則6条は条例の委任に基づく教育委員会規則にすぎないところ、一時的な利用制限を超えて全面的かつ無期限の利用禁止処分をすることは図書館の管理運営の基本的事項に含まれるとはいえず、委任の範囲を逸脱しているとして、本件処分は法令上許容される余地がないと判断した。 もっとも、原告の蔵書管理への介入制限、書庫出納票の大量発行の制限、カウンターでの放置行為への注意、過剰な借出しの制限、大型本の返却ポスト利用の制限といった、本件処分に至るまでの図書館職員の対応及び館長の指示については、いずれも合理性があり国家賠償法上違法とはいえないとした。損害額については、原告の図書館利用の態様が通常の利用方法と大きくかけ離れており、知識・情報の摂取が主たる目的であったとは認められないことから、処分による精神的損害は小さいとして、慰謝料5000円が相当と判断した。