AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(ビデリ・インコーポレイテッド)が、「インターネットを介したデジタル・アート配信および鑑賞の制御ならびに画像形成のためのシステムおよび方法」と題する特許出願について、拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求めた事案である。本願発明は、デジタル・アートや映像等のコンテンツを、インターネット上のサービス・クラウドを通じて薄型ディスプレイ装置に配信・表示するためのシステム及び方法に関するもので、保護記憶システム、通信コントローラ、供給エンジン、サービス管理システム、コンテンツ取込エンジン、外部コンテンツ・ゲートウェイ、ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ等の構成要素を備えている。特許庁は、引用発明(mpxビデオ管理プラットフォーム)に公知技術(甲2〜甲5)を組み合わせることにより、本願発明は当業者が容易に発明できたものであるとして、進歩性を否定する審決をした。 【争点】 主な争点は、(1)引用発明のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)として運営される「mpx」が本願発明の「サービス・クラウド」に相当するかという相違点の認定の当否、及び(2)本願発明と引用発明の4つの相違点(相違点1:ディスプレイ装置の動作状態・性能レベルのデータ収集、相違点2:外部コンテンツ・ゲートウェイによる転送、相違点3:ライブ・データ・フィード・ゲートウェイによる提供、相違点4:コンテンツ取込エンジンによる解析)に係る容易想到性の判断の当否である。 【判旨】 知財高裁は、審決を取り消した。まず、相違点の認定について、クラウドコンピューティングにはSaaSとASPの双方が含まれると解することができ、本願の特許請求の範囲及び明細書にもサービス・クラウドがASPを排除する旨の記載はないとして、引用発明の「mpx」が本願発明の「サービス・クラウド」に相当するとした審決の認定に誤りはないと判断した。次に、相違点1について、甲2技術で取得される品質情報はクライアント計算機の性能や動作状態に関するものであり、ディスプレイ装置自体の品質情報が含まれるとは認められないとして、容易想到性の判断に誤りがあるとした。相違点2について、甲3技術はピアツーピアシステムに関するものであるのに対し引用発明はコンテンツの取込み・配信等を主体的に行うものであるから技術分野を異にし、両者を組み合わせる動機付けも認められないとして、容易想到性の判断に誤りがあるとした。相違点4については、引用発明と甲5技術はサーバへのコンテンツ取込みという技術的共通性があり、組合せは容易であるとして、審決の判断を支持した。以上を総合し、相違点1及び2の判断に誤りがあるとして、審決を取り消した。