原状回復等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う津波により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(本件事故)により、福島県双葉郡浪江町津島地区に生活の本拠があった原告らが、同地区が放射性物質で汚染され避難を余儀なくされたとして、被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、被告東京電力に対しては主位的に民法709条、予備的に原子力損害賠償法3条1項に基づき、津島地区全域の放射線量の低下(原状回復請求)及び損害賠償を求めた事案である。原告らは本件事故当時、福島第一原発の北西約20kmから30kmに位置する津島地区に居住していたが、同地区は平成25年4月1日に帰還困難区域に指定され、現在に至っても指定は解除されていない。 【争点】 主な争点は、(1)原状回復請求の可否、(2)被告国の国家賠償責任(規制権限不行使の違法性・予見可能性・結果回避可能性・因果関係)、(3)被告東電の一般不法行為責任の成否、(4)原告らの損害額である。特に被告国の責任に関しては、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく技術基準適合命令を発すべきであったか、地震調査研究推進本部が平成14年に公表した長期評価(本件長期評価)により福島県沖の津波地震の予見可能性が認められるか、が中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、被告国の国家賠償責任を認め、被告東電と連帯して損害賠償を命じた。まず予見可能性について、本件長期評価は多数の専門家の議論を経て福島県沖海溝寄りの領域で津波地震が発生する可能性を指摘したものであり、被告国は平成14年の公表時点で被告東電に津波シミュレーションを命じる義務があったと認定した。これを行っていれば、福島第一原発の敷地を大きく超えるO.P.+15.707mという算出津波(本件算出津波)の知見が得られたと判断した。結果回避可能性については、敷地に浸水する津波への水密化等の対策は技術的に可能であったと認めた。そして、被告国は遅くとも平成18年の時点では、福島第一原発が津波に対して脆弱な施設であることを認識すべきであったにもかかわらず、技術基準適合命令を発しなかったことは著しく合理性を欠き、国賠法1条1項の適用上違法であると判断した。因果関係についても、同命令が発せられていれば本件事故は回避できたと認定した。被告東電の民法709条に基づく責任は、原賠法が一般不法行為責任の適用を排除していると判断して否定し、原賠法3条1項に基づく無過失責任を認めた。損害額については、津島居住原告の基本的な慰謝料額を一人1600万円(被ばく慰謝料請求のない原告は1570万円)と認定し、被告東電の既払額1450万円を超える部分について賠償を命じた。他方、原状回復請求(津島地区全域の放射線量低下の確認及び給付請求)は棄却・却下した。